車載向けSoC、高速かつ低電力で深層学習を実行:DNNアクセラレーターを実装
東芝デバイス&ストレージは、深層学習を用いた画像認識を高速かつ低消費電力で実行できる車載向けSoCを開発した。
従来SoCに比べて処理速度は約10倍、電力効率は約4倍
東芝デバイス&ストレージは2019年2月、深層学習を用いた画像認識を高速かつ低消費電力で実行できる車載向けSoCを開発したと発表した。従来のSoCに比べて処理速度は約10倍、電力効率は約4倍である。自動車向け機能安全規格「ISO 26262」にも対応している。
開発したSoCは、深層学習による画像認識をハードウェア上で実行するためのDNNアクセラレーターを実装した。このDNNアクセラレーターには大きく3つの特長があるという。その1つは「積和演算プロセスを並列化した」ことである。256個の積和演算ユニットを搭載したプロセッサを4個内蔵した。これによって、画像認識の処理性能を高めた。
2つ目は、「DRAMへのアクセスで消費される電力を低減した」ことである。開発したSoCは、演算プロセスの中間データを保持するための専用SRAMを、実行ユニットの近くに配置した。この専用SRAMに収まるよう、深層学習の推論処理を分割することで、DRAMへのアクセス回数を削減できるという。また、重みデータを事前に圧縮して保存し、読み込む時にそのデータを伸長する回路を実装した。これによって、重みデータの読み込みに用いるデータ量を減らすことができた。
3つ目は、「SRAMへのアクセスで生じる消費電力の節減」である。開発したSoCは、深層学習の推論処理を行う各レイヤーをパイプライン接続した。このため、1回のSRAM参照で複数レイヤーの処理を実行することが可能となり、消費電力を削減した。これまでのように、各レイヤーで処理が終わるたびにSRAMを参照しなくても済むという。
同社は今後、精度の向上や消費電力のさらなる低減を行い、2019年9月には車載向け画像認識AIプロセッサ「Visconti 5」として、サンプル出荷を始める予定だ。
なお、今回の研究成果は、半導体集積回路技術の国際会議「ISSCC(International Solid-State Circuits Conference) 2019」(2019年2月17〜21日、米国カリフォルニア州サンフランシスコ)で、その詳細を発表した。
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