広島大学ら、300GHz帯トランシーバーICを開発:80Gビット/秒のデータ伝送を実現
広島大学、情報通信研究機構(NICT)、パナソニックは、シリコンCMOS回路を用いた300GHz帯ワンチップトランシーバーICを共同開発した。80Gビット/秒のデータ伝送が可能となる。
シリコンCMOS回路で送信と受信部をワンチップに集積
広島大学、情報通信研究機構(NICT)、パナソニックは、シリコンCMOS回路を用いた300GHz帯ワンチップトランシーバーICを共同開発した。80Gビット/秒のデータ伝送が可能となる。
研究グループはこれまで、シリコンCMOS回路を用いて1チャンネル当たり105Gビット/秒のデータ送信を可能にする送信ICや32Gビット/秒のデータ受信が可能な受信ICを開発してきた。
今回は、無線通信規格「IEEE Std 802.15.3d」で示された、252GHzから325GHzの周波数チャンネル割り当てに基づき、この中のチャンネル66の周波数帯を用いて、80Gビット/秒の通信速度を可能にするワンチップのトランシーバーICを開発した。
開発した技術を用いることで、光ファイバーに匹敵する通信能力を無線通信で実現可能となった。しかも、シリコンCMOS回路でワンチップに集積したことで、搭載部品のコスト低減にもつながるとみている。
研究グループは、300GHz帯無線機の応用として、キオスク端末とモバイル機器間でのデータダウンロード、高精細映像の伝送、機器とサーバ間の無線通信などを想定している。
なお、研究成果は半導体集積回路技術の国際学会「ISSCC(International Solid-State Circuits Conference) 2019」(2019年2月17〜21日、米国カリフォルニア州サンフランシスコ)で詳細を発表し、会場で伝送実験のデモを行う。
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