ハード開発をよりオープンに、団体設立が相次ぐ:CXLやCHIPS Alliance(3/3 ページ)
IntelとRISC-Vの支持者たちがそれぞれ、ライバル同士となるアライアンスの設立を発表した。未来のプロセッサを見据え、競合するエコシステムを構築していくという。
RISC-Vアライアンスに匹敵する規模を目指すCHIPS Alliance
CHIPS Allianceは、RISC-V FoundationのRISC-V ISA(命令セットアーキテクチャ)に関する取り組み以外にも、オープンソースのコアやブロック、ツールのフルライブラリの作成を目指している。
WDの研究者でRISC-V Foundationの役員を務めるZvonimir Bandic氏は、「多くのコンピュータ企業がサービスを提供するために自社OSを開発しているように、RISC-Vを採用する企業も、Linuxと同様に、非常によく似たIPエレメントを開発している。そこで、より価値の高い製品の開発に注力できるように、共通の構成要素を作成しようと考えた」と説明している。
メンバー企業は、CHIPS Allianceに提供するものと自社で販売するもののバランスを見極めたいと考えている。
Bandic氏は、「当社のチームは、Swervよりも小型のRISC-Vコアを提供し、さらに同コアをオープンソース化する計画だ。ただし、同コアを組み込むフラッシュコントローラーの設計はオープンソース化しない」と述べている。
CHIPS Allianceは、Linuxを実行できるマルチコアRISC-V SoCに必要な全てのブロックを数年かけて作成、検証する包括的なプロジェクトについても計画している。この取り組みには、年間2500〜2万5000米ドルの会費を充てるという。これらのブロックやツールは、ApacheおよびLinux Foundationが使用するその他のライセンスの下、無償で入手可能となる。
Bandic氏は、「CHIPS Allianceは、少なくともRISC-Vコミュニティーに匹敵する規模のメンバーの獲得を目指している」と述べている。
CHIPS Allianceに対して、GoogleとSiFiveはまず、RISC-Vチップのテストに向けたユニバーサルな検証メソッドと不特定の設計ツールをそれぞれ提供する計画だという。CHIPS Allianceは今後10年間で、RISC-Vのオープンソース設計フロー全体をまとめることを目指している。
CHIPS Allianceは当面の目標として、Verilatorシミュレーターや検証ツール、合成ツールなど、既存のオープンソースプロジェクトを強化することを挙げている。その中には、米国防高等研究計画局(DARPA)のプロジェクトの一環として大学で開発中のものもある。
Tirias ResearchのアナリストのKrewell氏は、「半導体設計の民主化に向けて、現在たくさんの取り組みを進めている。難しいのはバックエンドの検証だ。この工程は観念的に進められることが多く、完全に機能本位のオープンソースチップと設計フローを構築する複雑さが評価されにくい」と述べている。
CHIPS Allianceは、Linux Foundationの約175のプロジェクトのうち最新のものを指す。同グループは、適用範囲をコンピュータ内のLinuxから、自動車や家電、ネットワーク機器の組み込みシステムにまで拡張し、現在はコンテナ向けのDocker画像フォーマットなどの関連分野の開発を支援している。
Linux Foundationの戦略プログラム担当バイスプレジデントを務めるMichael Dolan氏は、「将来的には、プロジェクトでAI向けのデータセットを共有する予定だ。オープンソースハードウェアに関しても、複数のプロジェクトが進行中だ」と述べている。
Linux Foundationは2019年3月12〜14日に米国カリフォルニア州で開催された「Open Source Leadership Summit」で、FacebookやGoogle、Netflixなどのパートナーと共同で、高性能ソフトウェアの新プロジェクトについて発表している。
【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
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