デジタル時代の敬老精神 〜シニア活用の心構えとは:世界を「数字」で回してみよう(57) 働き方改革(16)(7/11 ページ)
今回は「シニアの活用」についてです。やたらとずっと働きたがるシニアに働いてもらうことは、労働力の点から見ればよい施策のはずです。ただし、そこにはどうしても乗り越えなくてはならない壁が存在します。シニアの「ITリテラシー」です。
「シニアの求人」の実態
「シニアにどんな求人があるのか?」と思い、ネットの転職サイトを使って、求人数を数え上げてみました。
シニアの求人率は、一般の求人の0.8%しかありませんでした。下図のグラフではシニアを数が見えなかったので、シニアの部分を拡大した図も追記しています。
はっきりしていることは、シニアの求人は恐ろしく少ない、という事実です。
ただ、現時点では、この数字自体はあまり悲観して見る必要はないのかもしれません。下記の図は、年齢別の就労者数の比率のグラフですが、現時点では、そもそも65歳以上の就労者は少ないのです(前述の仕事を続けたい人[現実&希望]は、この一部の中の比率の話です)。今後、ジニアの就労人口は大きく変っていく可能性が高いのです。
先ほどの数値から、シニアの再就職としては、どの分野の業種が有利であるのかを、「シニア求人数/求人数」の比率で出してみました。
やはり、現場で体を使って汗を流す業種にシニア人材が求められています。―― つまり、「創作や内勤なんぞに、わざわざシニアなんぞ入れないよ」、と、はっきり言われているように思えます。
しかし、どうも、この結果、私の直感と合わないのです。私が企業の社長であれば、どんなシニア人材が欲しいか(あるいは、要らないか)、と考えてみると ――
- まず、全方面を調整するような管理職なんぞいらない。実際のところ、全方面を理解できるジェネラリストなんぞ、現場で役に立たない。変なこだわりやプライドを持って仕事されると鬱陶(うっとう)しいし。
- 細かいこと言わずに、日本や世界を飛び回って、きっちり仕事を取ってくる、あるいはそのプロジェクトを完遂して利益をもたらすような、費用対効果がきっちり取れる人間は欲しい。彼らの人脈を使ってもらえるなら、さらにうれしい。
- これまでの専門技術分野を、そのまま継続、あるいは方向転換しながら、現在の業務に微調整しながら対応できる人材はぜひ欲しい。今の業務を続けてもらえるのであれば、続けてもらいたい
- もちろん、現場で体を使って汗を流す人は欲しいが、若者でも外国人でも良い。シニアにこだわる必要はない
と、思ってしまうのです。
私がリビングで、皿洗いをしながら「……という点で、調査結果と私の仮説が合わないんだよね」としゃべっていると、長女が「インターネットでの募集と、現実の雇用では、状況が違うんじゃないの?」と言ってきました。
江端:「つまり?」
長女:「インターネットでの募集は、基本的に、募集者の情報量がゼロの状態からスタートすることになるでしょう? 例えば、パパの持っている技術力を、インターネットの募集要綱でスペックアウトすることはできないんじゃないかなぁ」
―― あ、なるほど。もしかしたら、私は探す方向を間違えていたのかもれない、と思い至りました。
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