NICTら、毎秒715Tビット信号を約2000km伝送:19コア一括光増幅器を開発
情報通信研究機構(NICT)ネットワークシステム研究所と古河電気工業は、新たに開発したC帯とL帯の通信周波数帯に対応する19コア一括光増幅器を用い、毎秒715T(テラ)ビットの大容量光信号を増幅し、2009kmの長距離伝送に成功した。
伝送能力は1.4Eビット×km
情報通信研究機構(NICT)ネットワークシステム研究所と古河電気工業は2019年3月、新たに開発したC帯とL帯の通信周波数帯に対応する19コア一括光増幅器を用い、毎秒715T(テラ)ビットの大容量光信号を増幅し、2009kmの長距離伝送に成功したと発表した。伝送能力は1.4E(エクサ)ビット×kmで、従来の約1.4倍となる。
今回の伝送システムは、古河電気工業が開発した19コアC+L帯光増幅器を用い、NICTが19マルチコア伝送ファイバーとともに周回伝送システムを構築した。このシステムには、345波長一括光コム光源や、1パルス4ビット相当の16QAM多値変調技術なども用いる。
19コア一括光増幅器に内蔵されたC帯用とL帯用の19コアEDF(利得ファイバー)は直径が0.2mmで、それぞれ2つのクラッドを持つダブルクラッド構造とした。内側クラッドに励起用のレーザー光を注入し、19コアを一括して励起し増幅動作させる。励起に使われないエネルギーは、19コアEDF直後の励起光除去素子で熱に変換されるという。19コアEDFの両端には、19コア伝送用のファイバーとアイソレーターを配置した。
光伝送システムの大容量と長距離化の実現に向けては、さまざまな研究が行われている。ただ、大容量伝送を目指すと通信距離は数十kmにとどまる。増幅器を用いて1000kmを超える長距離伝送を行う場合には伝送容量を大きくできない、などの課題があった。そこで、コア数と波長数を増やし大容量化を目指してきたが、これまでは複数コアの光信号を一括して増幅することが難しかったという。
そこで今回は、マルチコアファイバーと一括光増幅器を用いた伝送システムを開発し、大容量と長距離の両立を可能にした。波長当たりのデータレートを測定したところ、ばらつきは多少あるものの、C+L帯345波長において、ほぼ安定したデータレートとなり、合計で毎秒715Tビットを実現した。
研究成果については、次世代の光通信インフラ基盤技術と位置付け、早期実用化を目指す。さらに、国際標準化への取り組みを強化する考えだ。
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