連載
DRAMのスケーリング論:福田昭のストレージ通信(140) 半導体メモリの技術動向を総ざらい(3)(2/2 ページ)
今回はDRAMのスケーリングと、次世代メモリへのニーズが高まっている背景を取り上げる。
NANDフラッシュとDRAMの短所と長所
現行世代メモリの代表であるNANDフラッシュメモリとDRAMはいずれも、性能面で問題を抱える。ユーザーは不満を抱えつつも、使わざるを得ない。そこからユーザーの要望を完全に近い形て満たすメモリ、すなわち「次世代メモリ(New Memory)」への要求が生じている。
性能面の問題を見ていこう。NANDフラッシュメモリはアクセスが遅く、アクセスするデータの単位が大きく、書き換え回数の制限がある。その代わりに、記憶容量当たりの価格は非常に低い。
DRAMは電源を切るとデータが消えてしまう。シリコンダイ当たりの記憶容量はあまり増えなくなっている。そしてユーザーから見ると、チップ価格はあまり安いとは言えない。その代わりに良い点も数多くある。アクセスは高速であり、アクセスするデータの単位は小さく、書き換え回数の制限がない。
使いにくい現行世代メモリへの不満が次世代メモリのニーズを生み出す
将来を展望したときに、NANDフラッシュメモリのスケーリング(高密度化)は続くものの、品質と速度の低下は避けられない。DRAMのスケーリング(微細化と高密度化)も続くが、そのペースはユーザーが望むペースよりも、はるかにゆっくりとしたものになる。
ユーザーが現行世代のメモリに対して抱えている不満は、時間の経過とともに緩和されるのではなく、時間の経過とともに強まる。ここに、次世代メモリを期待する声が高まっている大きな理由がある。
(次回に続く)
⇒「福田昭のストレージ通信」連載バックナンバー一覧
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- NANDフラッシュメモリのスケーリング論
2018年8月に開催された「フラッシュメモリサミット」から、半導体メモリの技術動向に関する講演の内容を紹介するシリーズ。今回は、次世代メモリが期待される3つの理由のうち、スケーリング(微細化または高密度化)について解説する。 - 現行世代メモリと次世代メモリの違い
フラッシュメモリとその応用製品に関する世界最大のイベント「フラッシュメモリサミット(FMS:Flash Memory Summit)」。最近のFMS(2018年8月に開催)で公表された情報の1つに、半導体市場調査会社MKW Venture Consulting, LLCでアナリストを務めるMark Webb氏が「Annual Update on Emerging Memories」のタイトルで述べた、半導体メモリの技術動向に関する講演がある。その内容が興味深かったので、講演の概要をシリーズでお届けする。 - 「シリコン・サイクル」の正体
今回は、「シリコン・サイクル」について解説する。シリコン・サイクルの4つの状態と、シリコン・サイクルが備える特性を紹介する。 - 東芝、CMR方式HDDで最大容量16Tバイトを実現
東芝デバイス&ストレージは、CMR(従来型磁気記録)方式で記憶容量が最大16Tバイトの3.5型ニアラインHDD「MG08シリーズ」を開発した。