データセンターを支える光伝送技術 〜エッジデータセンター編:光伝送技術を知る(5)(3/3 ページ)
今回は、データセンターの新しいトレンドとして注目されている「エッジデータセンター」について解説する。
「鼠」と「象」のパケットデータ処理
IoTやビッグデータ処理で注目されているのが「鼠(Mouse/Mice)」と「象(Elephant)」パケットデータ処理である。
「鼠」と「象」パケットは、動画の配信が議論され始めた2010年ごろから注目されていた。
ネットワークを流れるパケットフロー数の大部分を占め、低レイテンシが要求される比較的短いパケットを「鼠」、フロー数は比較的少なく、低レイテンシはそこまで要求されないが、巨大なデータのパケットを「象」と呼ぶ。「象」はデータセンターのネットワーク伝送量の80%以上を占めるといわれる。動画データなどもあるが、仮想サーバを実現するためのアプリケーションソフトウェアなどの転送も、大きな割合を占めている。
これらの異なる性質のパケットを同一のスイッチネットワークで運用するのは非効率なので、「鼠」と「象」のネットワークに分離するという研究が行われてきた。実際に光スイッチを用いた「象」フローの回線スイッチネットワークを別に設けたデータセンターがあると、筆者は聞いたことがある。
IoTのアプリケーションでは、ビデオカメラ映像のような「象」パケットと、デバイスの制御情報などの「鼠」パケットが混在する。5Gシステムでは、異なる性質の情報が、異なるレイヤーで伝送される。エッジデータセンターにおいても、リアルタイムで画像処理を行う仮想マシンへの情報伝達では、異なる伝送経路に必要になるだろう。
先ほど述べた光スイッチは、電気に変換することなく光信号を切り替えられるので、リアルタイム「象」パケットのスイッチに要望なデバイスである。従来は、スイッチの切り替えにミリ秒オーダーの時間がかかるシリコンMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)チップが主流だったが、近年は、シリコンフォトニクスを用いた、ナノ秒レベルで切り替え可能なスイッチ素子の開発も活発になっており、実用化が期待されている。
筆者プロフィール
高井 厚志(たかい あつし)
30年以上にわたり、さまざまな光伝送デバイス・モジュールの研究開発などに携わる。光通信分野において、研究、設計、開発、製造、マーケティング、事業戦略に従事した他、事業部長やCTO(最高技術責任者)にも就任。多くの経験とスキルを積み重ねてきた。
日立製作所から米Opnext(オプネクスト)に異動。さらに、Opnextと米Oclaro(オクラロ)の買収合併により、Oclaroに移る。Opnext/Oclaro時代はシリコンバレーに駐在し、エキサイティングな毎日を楽しんだ。
さらに、その時々の日米欧中の先端企業と協働および共創で、新製品の開発や新市場の開拓を行ってきた。関連分野のさまざまな学会や標準化にも幅広く貢献。現在はコンサルタントとして活動中である。
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