東芝、車載向けLiDAR用計測アルゴリズムを開発:測距解像度を2.2倍に向上
東芝デバイス&ストレージは、車載向けLiDAR(ライダー)の長距離測距における解像度を、従来に比べて2倍以上も改善できる「計測アルゴリズム」技術を開発した。
同一解像度なら測距距離は22%増大
東芝デバイス&ストレージは2019年4月、車載向けLiDAR(ライダー)の長距離測距における解像度を、従来に比べて2倍以上も改善できる「計測アルゴリズム」技術を開発したと発表した。
車載用LiDARは、レーザーを照射しその反射光を検知することで、遠距離にある物体までの距離を測定できる。測距データを基に、車両の周辺環境を3D画像として確認することが可能となる。ただ、実使用環境で長距離を測定するには、太陽光などノイズの影響を低減することや、遠方にいる歩行者などを正しく検出するための高い解像度が求められる。
東芝グループはこれまで、スマート平均化アルゴリズム(SAT)技術を開発し、200mまでの距離を高い精度で測定することに成功していた。しかし、自動運転システムなどに適用される車載用LiDARは、ノイズの影響をさらに改善し解像度を一段と高める必要があった。
そこで同社は、SATの性能を向上させた「フレーム間スマート平均化アルゴリズム(I-SAT)」を新たに開発した。I-SATは、複数のフレーム(時間軸)の情報を基に平均化の処理を実行することで解像度を高めた。
この時、前フレームの測距データは、測距結果のみを保持することでメモリの使用量を抑えた。しかも、前フレームの情報を用いるときは測距結果を枠として設定する。その枠内にある現フレームの情報も出力データ候補として追加する。これによって、前フレームと現フレームの情報が混同されることなく、出力データの候補数を増やすことができたという。誤検出の除去も、複数フレームの測距結果を用いて信頼度の判断を行う。
同社は、I-SAT技術とSAT技術による解像度および、測距可能な距離について検証した。この結果、I-SAT技術を適用すると距離200mにおける解像度は2.2倍も改善され、空間分解能0.1°を実現した。同一解像度であれば、測距可能な距離は22%も増大することが分かった。なお、実装コストの増分は従来技術に比べ1%以下に抑えられるという。
東芝デバイス&ストレージは今後、測距精度のさらなる向上や実装化に向けた技術の開発に取り組み、2020年までに実用化を目指す考えである。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 武器は横断提案と密結合、東芝が見いだす車載の勝ち筋
日系半導体ベンダーの雄として、ディスクリートからシステムLSIまで豊富な車載ラインアップをそろえる東芝デバイス&ストレージ。同社は2017年10月に、車載半導体事業の拡大に向けて「車載戦略部」を新設した。同部署で部長を務める早貸由起氏は、これからの車載事業戦略をどのように描いているのか――。 - 東芝、パワー半導体向け駆動回路を新たに開発
東芝は、モーター駆動用のパワー半導体を高い効率でスイッチングするための駆動回路を開発した。 - 東芝、Arm Cortex-M4コア搭載マイコンを追加
東芝デバイス&ストレージは、Arm Cortex-Mコアを搭載したマイコン「TXZファミリー」として、新たに「M4Gグループ(1)」を追加した。OA機器やAV機器、産業機器などの用途に向ける。 - 東芝、SSD向けにPAM4採用のブリッジチップ開発
東芝は、SSD(Solid State Drive)内に組み込まれるフラッシュメモリとコントローラICの間に挿入するブリッジチップを開発した。SSDにおいて高速化と大容量化の両立を可能にする技術である。 - 東芝情報システム、ソフトの流出や模倣を防止
東芝情報システムは、「第8回 IoT/M2M展 春」で、IoT(モノのインターネット)の上流から下流まで、悪意ある攻撃からシステムを保護するためのセキュリティソリューションを提案した。 - TSN対応の車載通信向けブリッジIC、1Gbpsを維持
東芝の欧州現地法人であるToshiba Electronics Europeは、ドイツ・ニュルンベルクで開催中の組み込み技術の展示会「embedded world 2019」(2019年2月26〜28日)で、Ethernet AVB(Audio Video Bridge)とTSNに対応する、車載情報通信システム向けのブリッジICを展示した。