TSN対応の車載通信向けブリッジIC、1Gbpsを維持:embedded worldで東芝がデモ
東芝の欧州現地法人であるToshiba Electronics Europeは、ドイツ・ニュルンベルクで開催中の組み込み技術の展示会「embedded world 2019」(2019年2月26〜28日)で、Ethernet AVB(Audio Video Bridge)とTSNに対応する、車載情報通信システム向けのブリッジICを展示した。
東芝の欧州現地法人であるToshiba Electronics Europeは、ドイツ・ニュルンベルクで開催中の組み込み技術の展示会「embedded world 2019」(2019年2月26〜28日)で、Ethernet AVB(Audio Video Bridge)とTSNに対応する、車載情報通信システム向けのブリッジICを展示した。Ethernet AVB対応は「TC9560」シリーズ、Ethernet AVBおよびTSN対応は「TC9562」シリーズで、TC9562は2019年1月に発表されたばかりである。
東芝デバイス&ストレージ ミックスドシグナルIC事業部 車載デジタル開発第一担当の参事を務める森弘一氏は、「CAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)が主流だった車載ネットワークでは近年、安価で軽量のケーブルで容易にネットワークを構築しやすいイーサネットが使われ始めている。ただし、車載通信では、PCなどに比べてデータ送信の遅延が許されないため、イーサネットの拡張版で、時刻同期と低遅延を特長とするEthernet AVBやTSNが重要視されている」と説明する。エンド・ツー・エンドでの遅延は、Ethernet AVBで2ミリ秒、TSNでは100マイクロ秒とされている。
TC9560のデモでは、1台のディスプレイ(送信元)から、2台のディスプレイ(送信先)に映像を送信。うち1台はEthernet AVBで、残りの1台は標準イーサネットで送信し、映像の遅延を比較した。送信元と、送信先の1台のディスプレイには、TC9560を搭載した基板が接続されている。
Ethernet AVBやTSNの車載イーサネットでは、現在、通信速度が100Mビット/秒(bps)の規格の普及が進んでいるところだが、2020年〜2021年以降は1Gbpsの導入が始まるとされている。Ethernet AVBとTSNに対応するTC9562のデモでは、約1Gbpsの通信速度が安定して実現できることを示した。
なお、TC9560のパッケージサイズは10×10mmだが、TC9562では9×9mmとなっている。「両シリーズ間にピン互換性はないが、TC9560と置き換えてTC9562を評価しやすいよう、10×10mmのインターポーザー基板を用意している。インターポーザー基板上にTC9562を載せれば、TC9560と置き換えて、すぐに評価できる」(森氏)
森氏によれば、自動車メーカーも車載イーサネットの採用に、より積極的になっていて、TC9560は、欧米の自動車メーカーが採用することが既に決まっているという。
Ethernet AVBよりもさらに低遅延のTSNは、車載だけではなく産業用(制御)ネットワークの下位レイヤーに導入する動きが進んでいる(関連記事:「産業用IoT向けイーサネットは次世代へ」)。森氏は、「当社にとっては、TC9562の用途が、車載だけでなく産業用にも広がっていくことになる」と述べた。
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