障害者雇用対策に見る、政府の覚悟と“数字の使い方”:世界を「数字」で回してみよう(58) 働き方改革(17)(3/10 ページ)
今回は、働き方改革のうち「障害者の雇用」に焦点を当てます。障害者雇用にまつわる課題は根が深く、これまで取り上げてきた項目における課題とは、少し異質な気がしています。冷徹にコストのみで考えれば「雇用しない」という結論に至ってしまいがちですが、今回は、それにロジックで反論してみようと思います。
「障害者」の定義は流動的
そもそも、このコラムの検討を開始してから、私は「障害者」について何も知らないことに気が付きました。いわゆる障害者の方は、職場で見るか、通勤電車の中で見るか、あるいは小説やドラマで接する程度です。
そして、仮に、障害者である本人、またはその家族であったとしても、「障害者」の全体像を語ることは難しいのではないかと思いました。
そこで、まず「障害」という言葉の意味から調べてみました。「障害」には大きく3種類「身体」「知的」「精神」があることが分かりました。最初に、あまり深く考えず、この3つを私に当てはめて考えてみました。
上記は、自虐ネタでもギャクでもなく、50年以上の私の人生の行動から導き出した、客観的な自分自身の観測結果です。
この観測結果より、全カテゴリーにおいて「江端が障害者」であることは確定といっても良いのですが、社会一般で使われている「障害者」には、きちんとした定義と事例があるのです。
基本的に、「障害者」は、国、地方公共団体、または各組織において明文規定されています。その上で、(A)仕事や生活を行う上での自分の問題となる障害、であって、(B)主観的観点だけではなく、社会全体から客観的に「障害は問題である」と認定されなければなりません。
つまり、「障害者である」と自己主張することはできず、また「障害者ではない」と自己否定することもできません。つまるところ障害者とは、「その時代の社会が、その社会の状況に応じて決めている」と言える訳です。(以下、「障害者」とは、(A)(B)の条件を満たす障害者のことを言うこととします)。
つまり「障害者」という概念は、流動的なものなのです。社会から「障害」であると認定されなくなったら(認定できなくなったら)、障害者は消滅します。
この実施例について、「IT技術の活用」という観点で、下図を使って説明をします*)。
*)本当は、「愛」だの「優しさ」だのという、無体の概念で説明したかったのですが、私には無理でした。
これは、一つの「IT活用による障害者の消滅(または、障害の緩和)のプロセス」の一例です。
しかし、逆に、ITの進歩を進めれば進めるほど、ITを使うことができない人間が増えていきます。私たちの社会は、現在進行形で「IT活用による障害者の増加(または、障害の悪化)のプロセス」を導いているともいえるのです*)。
*)これは前回のコラム「デジタル時代の敬老精神 〜シニア活用の心構えとは」でも述べたように「シニアを社会から分離して、社会活動から除外してしまう方がコストは安い」の理論に帰着してしまうと、いう点でも似ています。
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