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障害者雇用対策に見る、政府の覚悟と“数字の使い方”世界を「数字」で回してみよう(58) 働き方改革(17)(4/10 ページ)

今回は、働き方改革のうち「障害者の雇用」に焦点を当てます。障害者雇用にまつわる課題は根が深く、これまで取り上げてきた項目における課題とは、少し異質な気がしています。冷徹にコストのみで考えれば「雇用しない」という結論に至ってしまいがちですが、今回は、それにロジックで反論してみようと思います。

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現在の障害者雇用の実態

 では、ここからは、我が国の障害者と障害者の就労状況の全体像を俯瞰してみたいと思います。

 ビックリしました。我が国では、神奈川県(910万人)以上、東京都(1350万人)以下の人口が、障害者として認定されているのです。全ての障害者を労働力として組み込めることはできないとしても(例えば、私の母は、寝たきりの「障害者手帳」の所持者です)、この数字はすごいです。

 乱暴な計算ですが、もし、全ての障害者が健常者と同様に電車に乗ることができる社会を仮定すれば、電車の1車両の定員を150人とすると、平均して、体が不自由のように見える人が5人、非日常的な振る舞いをしているように見える人が1人、その他、(外部からは確認できませんが)突然パニック状態に陥るかもしれない人が5人、常に乗車していなければならないはずです。

 私はこれまで、1万1800回近く通勤で電車を使ってきましたが、そのような光景(11人の障害者と同乗している車両)を一度も見たことがありません。これは、障害者が社会から分離されていることを示していると思います。

 現時点で、実際に就労している障害者は、約50万人、全障害者数に対して、たったの5.3%です。これが「『自分の障害』によるために就労できない」のか、「『社会の障害物が除去されていない(例:バリアフリーが整備されていない)』ために就労できないのか」は不明です。

 次に、65歳未満(いわゆる、一般企業における定年時)の人口を調べてみました。

 上図より、障害者の種類によって、明らかに異なる傾向が見られます。

 身体障害者の4分の3が高齢者なのは、まあ想定内であるとしても、知的障害者の9割は65歳以下であるというのは、正直驚きました。また、精神障害者は、おおむね人口比と一致している感じはしますが、その雇用者数の少なさ(5万人/243万人)というは、驚くほど低いと思いました。

 単純にデータを見る限りにおいては、障害者であっても、その就労の難しさは、以下のように表すことができると思います。

精神障害 >> 知的障害 > 身体障害

 身体障害に対しては、物理的な障害は明確です。これはコストと時間の問題を無視すれば、いつかは解決できるものと考えることができます。知的障害に対しても、これもコストと時間を(以下省略)、知的レベルに適合した業務を割り当てることができるようにも思えます(もちろん、どれも簡単な話ではなく、何らかの”力”を働かせなければ実現できません(後述))。

 ところが、精神障害については、その障害の内容や、その障害に対する対応が、個人によって大きく異なるだろうと考えられます。障害の内容を事前に定量的に予測できないケースでは、障害者を受け入れる側も、設備投資コストや労務計画が組み難いだろうと思いました。

 しかし、精神障害者の就労の難しさについては、これは、障害の性質だけでなく、制度上の問題もあった可能性があります(後述)。

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