障害者雇用対策に見る、政府の覚悟と“数字の使い方”:世界を「数字」で回してみよう(58) 働き方改革(17)(8/10 ページ)
今回は、働き方改革のうち「障害者の雇用」に焦点を当てます。障害者雇用にまつわる課題は根が深く、これまで取り上げてきた項目における課題とは、少し異質な気がしています。冷徹にコストのみで考えれば「雇用しない」という結論に至ってしまいがちですが、今回は、それにロジックで反論してみようと思います。
厚労省に電話してみた
疲れ果てた私は、もう自力で数値を導くのを諦めて、厚生労働省に直接電話をしてみました。
いろいろとツッコみたいことはあるのですが ―― 例えば、一応、私、厚生労働省のHPから数値を探して計算していたのですが、上記の式の値と随分違っているなど(まあ、これは私の探し方が悪かったのかもしれません) ―― それと、障害者の失業者数(あるいはその推定方法)をどうしても見つけることができませんでした。
もう少し詳しく記載したものが以下の図です。
障害者の失業率と、一般の失業率を、同じ条件で語ることができないのは良く分かっていますが、それでも算出根拠が分からないのは、気持ち悪いです*)。
*)他文献でも同様の指摘があるようです。ただ、江端の見落としの可能性もありますので、もし開示されている資料がありましたら、どなたか江端にご教示ください。
ただ、私は、この失業障害者数というものが、客観的なデータでなくとも、何かの「祈り」か「願い」のようなものであっても良いと思っています ―― エンジニアとしては失格の発言かもしれませんが。
というのは、この法定雇用率の数値(現在は2.421%)というのは、これまでも、何回も変更され続けてきているからです。
1.5(1977年〜)→1.6%(1988年〜)→1.8%(1998年〜)→2.0%(2013年〜)→2.2%(2018年〜)と、特に、2018年4月の改正はわずか5年間です。このような変化は、これまでにはない激しい動きです。
社会の状況に応じて、法定雇用率が変動するのは当然ですし、上昇した法定雇用率によって、障害者の雇用が増加するのも当然です。
ですが、その数値の拠出根拠については、私にはまだ疑問が拭えません。前述と繰り返しの話になりますが、障害者の失業者数(多分、推定値だと思いますが)に、かなりの無理があるのを感じます。
ただ、今の私は、「何が何でもこの数値の算出根拠を知りたい」 ―― とは思っていないのです。
それは、先ほど述べたように、「法定雇用率は、自然現象を説明する数値ではなく、政策を実行する為の道具概念であればいい」と思っているからです。
なお、参考までに以下の図も添付します(説明は割愛いたします)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.