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5Gのその次へ、日欧共同プロジェクト「ThoR」とは?無線で光同様の通信を実現(2/2 ページ)

 5G(第5世代移動通信システム)の商用サービス実現が2020年に迫る中、5Gのさらに次の世代となる「Beyond 5G」の研究も始まっている。日本と欧州の産学官が共同で研究を進めるプロジェクト「ThoR(ソー)」について、プロジェクトリーダーを務める早稲田大学理工学術院教授の川西哲也氏が、2019年5月29〜31日に東京ビッグサイトで開催された「ワイヤレス・テクノロジー・パーク(WTP)2019」で、その研究内容について説明した。

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光をTHz帯信号に、各研究内容を紹介

  具体的には、次のような研究開発を行っている。

  • フロントホール技術の開発:10mから1kmまでの範囲でリンク性能に関する研究を行い、オフライン処理を用いて100Gビット/秒以上の伝送速度を達成する。
  • 300GHz無線システムの開発:V/Eバンド(50G〜75GHz/70G〜90GHzの周波数帯域)送受信モジュールを用いて、リンクの距離1kmで伝送速度40Gビット/秒以上のリアルタイム動作を目指す(さらに高い伝送速度を目指した取り組みも行う予定)。
  • システムにおけるキーデバイスの研究開発:300GHz帯に対応する高性能増幅器、周波数変換器、低雑音受信器などの開発。

 上記以外にも、300GHz帯の伝搬に関する研究成果を国際標準化文書へ反映させることも目指しているという。


ThoRのシステムの構成図(上)60GHzまたは70G〜80GHzの信号をアグリゲートし、リアルタイムでTHz帯域での送受信を実現する。システム開発のためのキーテクノロジーも紹介された(左下)(クリックで拡大)

 この日、川西氏は、「Beyond 5Gを実現するためのミリ波・テラヘルツネットワーク」と題した講演の中で、ThoRの内容について説明。光でミリ波信号を発生させる技術や、THz帯の増幅器や周波数変換の開発、高出力のTHz帯信号を受けるためアンプやレシーバーの開発など、各組織の研究、開発内容も紹介した。

左=光からミリ波信号を発生させ、アップコンバーターによって、THz帯へと変換する。フランスのリール第一大学が担当/右=THz帯のトランシーバーの設計は、シュトゥットガルト大学が担当(クリックで拡大)
フロントエンドMMIC、モジュールの製造はフラウンフォーファー応用固体物理研究所が行う。(クリックで拡大)
左=NECが担当する「進行波管アンプ」。真空管を用いて、300GHz帯で必要な出力が得られるという。現在研究開発中だ/右=THz帯用のアンテナに関する伝搬と干渉の研究。千葉工業大学とブラウンシュバイク工科大学が担当している。(クリックで拡大)

基地局の数は人口を超える?

 講演の中で、川西氏は、「根拠があるわけではないが、今後、将来的には人口を超えると考えている。現在、国内の照明の数は世帯当たり10個とすると約5億個あるが、暗いから明かりをつけるということが当たり前になっているのと同じことが、電波に関してもいえるようになってくると思う」と所見を述べた。

 そのうえで、「人口より多い基地局が本当に必要となると、固定のリンクが重要な役割を果たす」と説明。THz帯域を使った無線ネットワークの概要を示し、伝送の障害になるような建物の少ない地方や、都市部のビルとビルの間をつなぐような形で、THz帯の無線通信システムが活用できることを例示した。このプロジェクトが目標としているのは、こうした「ポイントトゥーポイントの技術だ」というが、「最終的には各端末につなぐという技術もできるかと思うが、その前のステップとしてポイントとポイントをつなぐということが必要だ」と説明した。

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