柱をさらに太く、マキシム・ジャパン林社長に聞く:インタビュー(2/2 ページ)
Maxim Integrated(以下、Maxim)の日本法人であるマキシム・ジャパンの社長に2018年12月、林孝浩氏にインタビューした。
“ブロードマーケット”へのアプローチを強化
――インダストリアル向けビジネスの日本での戦略を教えてください。
林氏 全社売上高に占めるインダストリアル向け売上高は28%と最も高いが、日本での売上高に占める産業向けの比率は28%を下回る。全社売上高比率は25%ながら、日本市場では50%を超える自動車向けとは対照的だ。それだけ、日本でインダストリアル向けビジネスを成長させる余地は大きく、まだまだ、リーチできていない顧客は多く、いわゆる“ブロードマーケット”へのアプローチを強化していく。
2017年11月から、一次代理店である契約販売代理店に加え、二次代理店を「推奨販売代理店」として、マキシム・ジャパンとして直接、販売/サポートに関するトレーニングを実施し、販売網の強化を行っている。取り組み開始から1年が経過し、それまで見えていなかった顧客や市場が可視化され、一定の成果を挙げている。
加えて、デジタルマーケティングも強化している。定期的にWebを通じたセミナー(ウェビナー)を開催し、好評を得ている。そうしたウェビナーの参加者に対し、販売チャネルを通じて、より細かな情報提供を行うなどの、サポートもスムーズに行えるようになってきた。アナログ/デジタル、フィジカル/バーチャルの双方で、今後もサポート強化を進めていく。
――インダストリアル向けにはどのような製品を展開されていきますか。
林氏 小型/高効率、低消費電力といった特長ある製品を展開することはもちろんだが、顧客にとって、使いやすい製品を提供していきたい。例えば、電源モジュール製品群「uSLIC」(マイクロシリック)もその一つだ。uSLICは、高耐圧ながら高効率で低発熱という特長を持つHimalayaシリーズなどのパワーマネジメントICチップと、インダクタなどの周辺部品をパッケージ内に取り込んだ電源モジュールだ。高効率で超小型の電源を、わずかな抵抗器、キャパシターを外付けするだけで実現できる。
メディカル向けビジネスを立ち上げたい
――今後の目標などはありますか。
林氏 ブロードマーケットでの売り上げ規模を2022年度までに2017年度対比5倍に引き上げるなど、数値目標を持ちながら、柱であるインダストリアル向け、車載向けのビジネスを拡大させていく。
それと同時に、医療機器/ヘルスケア機器向けのビジネスを本格的に立ち上げていきたいと考えている。医療市場は、今後、相当大きな市場になる見込みだが、その一方で医療費高騰などの社会問題が大きくなることが予想される。既にMaximでは、心拍センサーなど各種医療向けセンサーを製品化しており、電源製品などとともに、予防医療を可能にするさまざまな端末、システムに提供していき、社会貢献を果たしたいと思っている。
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