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5GはHuawei抜きで何とかするしかない 座談会【前編】IHSアナリストが読む米中貿易戦争(2/3 ページ)

終息の糸口が見えない米中貿易戦争。IHSマークイットジャパンのアナリスト5人が、米中貿易戦争がエレクトロニクス/半導体業界にもたらす影響について緊急座談会を行った。座談会前編では、5G(第5世代移動通信)とCMOSイメージセンサーを取り上げる。

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5GはHuawei抜きで何とかするしかない

EETJ 今回の貿易戦争ではHuaweiがターゲットにされていますが、特に5G(第5世代移動通信)において、どのような影響があると見ていますか。


大庭光恵氏

大庭光恵氏 5Gは米国と韓国で商用サービスが始まり、日本も準備を進めていますね。コスト面では課題を抱えつつ、Huawei抜きで準備を進めようというのが、キャリアや周辺機器メーカーの現状だと認識しています。

 Huawei抜きだと、5Gが遅れてしまうのかというと、そうでもありません。通信というのは国策も大きく関わってきますから。ただ、コスト面では機器メーカーがかなりのプレッシャーを抱えつつ、苦戦している状態です。

 Huaweiは、LTEのTDD(時分割多重)方式で高度な技術を持っています。加えて5Gで必要とされる高帯域化でも強く、コスト競争力もある。現在、これらが欠けている中で、何とかやっていこうと必死になっています。Huawei抜きでやっていくしかないんですよね。

南川氏 2018年におけるHuaweiのスマートフォンの世界シェアは約15%。一方でインフラ系の基地局はもっとシェアが高いですよね。

大庭氏 3割くらいですね。これは米国抜きでの数値です。米国以外で、高いシェアを獲得していることになります。

南川氏 米国としては、Huaweiのインフラ機器が世界のインターネットのプラットフォームになってしまっては困るわけですよね。そこはとにかく、たたきたい。Android OSを含むGoogleサービスを使えない、Armのコアも使えないところまで追い込んで、本気でHuaweiを弱らせようとする手段に打って出ました。

大庭氏 Huaweiは、コンシューマー向けのルーターやネットワーク機器でもグローバルシェアトップを獲得している機器を持っています。そういった分野でのOSやIP(Intellectual Property)の締め付けは、今後も考えられると思います。

 Huaweiの競合は、新技術の開発とコスト競争力を両立させなければいけないというのが大きな課題になっています。Huaweiが排除された国ではチャンスがあるわけですが、コストやアップグレードをどうするのかは悩ましい問題です。サブ6GHz帯はともかく、5Gの本命ともいえるミリ波帯向けでは、コストに対するプレッシャーがかなり強いと聞いています。


杉山和弘氏

杉山氏 当初の予想よりも、Huaweiショックの半導体業界へのインパクトは大きくなりそうです。

 Huawei製スマートフォンの出荷台数は、2018年の約2億台から、1500万〜1800万台にまで低下すると考えられます。Arm、OS、とりわけGoogleのAndroid、さらにSynopsysやCadenceのEDAツールまでストップまでもが、止められそうだからです。

 スマートフォン市場全体への影響も大きく、市場が冷え込む可能性もあるかと思われます。Huaweiスマートフォンの価格は、各モデルともApple、Samsungに比べて断トツで安い。Huawei離れによる他社への代替えが思ったよりも進まずに、スマートフォン市場全体の売り上げが低下することになりそうです。その結果、半導体業界へのインパクトも大きくなると予想しています。特に、Samsung、SK Hynix、Micron、東芝メモリといったメモリメーカーへのインパクトが大きいのでは。そうなると、半導体市場の回復にも影響が出てくるでしょうね。DRAM、NANDフラッシュ市場の回復も遅れると思う。

 スマートフォンについてはAppleやOPPOなど他の端末メーカーがシェアを奪っていくのかなという予想はつきますが、インフラ側は3割以上とシェアが高い中で、他メーカーで代替えできるのか、というのが一番気になっています。最終的には、Huaweiを使うという所も出てくるのかなって。イタリアなんかもHuaweiを排除しないと言っていますし。そういう国がたくさん出てくるんじゃないでしょうか。

前納氏 トランプ大統領は「Huaweiの機器を使うな」と言うだけで、補助金なんか出さないしね(笑)

杉山氏 米国は最初からHuaweiの通信機器を使ってないんだから、基本的には何の影響もありませんからね。せっかく5G向けのアプリケーション開発が盛り上がりつつあるのに、コストの高騰で5Gの普及が減速しかねないという懸念はあります。

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