個別の計測器提供から“テストシステム”の提供へ:テクトロニクス(2/2 ページ)
テクトロニクスは2019年6月18日、ユーザー向けイベント「テクトロニクス・イノベーション・フォーラム 2019」を東京都内で開催。それに併せて来日した、米国Tektronix本社でTime Domain部門のバイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーを務めるChristopher Witt氏と、オートモーティブ/パワー部門のゼネラルマネジャーを務めるSudipto Bose氏に、Tektronixの戦略などについて話を聞いた。
RF分野にも積極的に進出
EETJ Witt氏は、オシロスコープを手掛けるTime Domain部門のバイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーですが、オシロスコープでも、単体の販売に加えてテストソリューションの提供にシフトしていくのでしょうか。
Christopher Witt氏 その通りで、今後はTektronixの技術IP(Intellectual Property)とパートナー各社を組み合わせて、より深いところで統合したソリューションを提供していく方針だ。オシロスコープ事業のターゲット市場は自動車、パワー、データセンター、航空宇宙の4つだが、そのいずれについても、統合したソリューションを提供する戦略を進めていく。
EETJ データセンターでの動向については、いかがでしょうか。
Witt氏 データセンターにおける重要なトレンドは、100Gビット/秒(bps)から400Gbpsへの移行と、SiCやGaNを使った高効率のパワーコンバーターの開発だと考えている。それらの分野の課題を解決できる測定ソリューションを当社は提供できる。
EETJ Time Domain部門で何か新しい動きはありますか。
Witt氏 RF分野にも、より積極的に進出しようと考えている。まずは、5G(第5世代移動通信)ではなくミリ波レーダーなど自動車のRF分野を狙う。既に、79GHz帯に対応した広帯域レーダー信号解析ソリューションを発表しているが、実はここでもパートナーシップが生きている。この製品が、Tektronixのオシロスコープ「6シリーズMSO」と日本電波工業(NDK)のダウンコンバーター、メビウスの解析ソフトウェアを組み合わせたものだからだ。将来的に、こうした製品を数多く発表する予定だ。
EETJ 今後のオシロスコープの製品ロードマップについて教えてください。
Witt氏 明確に答えるのがなかなか難しいが、一つ言えるのは、私はTime Domain部門のバイスプレジデントを務めて3年になるが、その間にオシロスコープの開発方法が完全に変わったということだ。製品の仕様をがっちりと固めて開発するウォーターフォール型開発から、アジャイル型開発へと変えたのだ。その方が工程ごとに顧客からのフィードバックを取り入れやすく、最終製品は顧客の要望にかなり沿ったものになる。
効率よく開発できるので、製品を発表する頻度も上がる。実際われわれは、2017年に発表したのはオシロスコープ上位機種の「5シリーズMSO」だったが、2018年には2製品を、2019年には既に3製品を発表している。ソフトウェアも3カ月ごとに新しい機能を追加している。顧客のニーズをくんで、より細分化した製品をスピーディに、柔軟に開発できるようになっている。
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