RISC-V活用が浸透し始めた中国:製品分解で探るアジアの新トレンド(40)(3/3 ページ)
今回紹介する、SiPEEDのAI(人工知能)モジュールには、RISC-Vプロセッサが搭載されている。RISC-V Foundationには中国メーカーも数多く参加していて、RISC-Vの活用は、中国でじわじわと浸透し始めている。【訂正あり】
KENDRYTEのRISC-Vプロセッサを分解
図4は、今回報告した代表的な2つのチップを開封した様子である。
左はANLOGICのFPGA。チップは比較的小さいがFPGAのロジックエリア、SRAMエリア、乗算器エリア、DRAMインタフェースと分かれており、ほぼ他メーカーのFPGAと同じ構造になっている。顕微鏡で観察すると、チップ上に、ANLOGICの社名と製品が開発された年号が記載されている。写真からも分かるように、どうやらこのチップは2016年に開発されたチップらしい。なお、この写真は配線層を薬品で除去した後の拡散層である。
開発から3年が経過しているので、ANLOGICは、さらに微細化したFPGAを開発しているはずだ。今後、より大きなロジックエリアやSRAMなどを搭載した高機能FPGAが、ANLOGICや他の中国メーカーからも出てくるだろう。
図4の右は、RISC-Vコアを用いるKENDRYTEのK210を開封した様子である。こちらも配線層を除去したので、内部のIP(Intellectrual Property)が鮮明に見えている(この写真には若干ボカシを入れている)。
チップ上には設計開発を行ったメーカー名と年号ロゴが搭載されているが、設計開発したメーカーはKENDRYTEではない別のメーカーであることが判明した。プロセッサの開発で実績の多いメーカーである。またチップ上に記載された年号は2017年であった。
さらに、仕様ではデュアルコアのRISC-VとされているK210であるが、本チップにはRISC-Vコアが4基搭載されていることも判明した。やはり、チップは開封しないと何も分からない。
このシリコンを提供したメーカーはクアッドコアとして製品をリリースし、KENDRYTEはそのうち2基のみを仕様公開して、デュアルコアとして活用している。同じシリコンを使い分けている可能性が高い。このような事例は多いので、パッケージだけで判断せず、チップを開封し、メーカー名、メーカー型名、年号などもチェックしないと判断ミスを起こす可能性は大きい。
いずれにしても、中国のチップ(内部は別の場合もある)だけで構成されるモジュールは加速度的に増えつつある。パッケージは中国、中身は他国というケースもあるのでチップ開封判断はますます重要になっている。弊社は、パッケージだけで判断せず、チップを開封して中身を確認するという“真の解析作業”を今後も続けていく。
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