開発キットで“カメラ開発の変革”に挑むザインの野望:エコシステムも構築へ(1/2 ページ)
カメラ開発の在り方を変える――。ザインエレクトロニクスは、イメージシグナルプロセッサとともに、ISP用のファームウェアをプログラミング不要で開発できる開発キット「CDK」(Camera Development Kit)を展開。「CDKにより、ISP用ファームウェアの開発負荷を大幅に軽減できる。CDKを広めることで、カメラの開発環境を変えたい」(同社)とし、よりCDKを使いやすい開発ツールにするためのエコシステム作りなどを実施し、CDK普及に向けた動きを強めている。
カメラ開発の在り方を変える――。
ザインエレクトロニクスは、イメージシグナルプロセッサとともに、ISP用のファームウェアをプログラミング不要で開発できる開発キット「CDK」(Camera Development Kit)を展開。「CDKにより、ISP用ファームウェアの開発負荷を大幅に軽減できる。CDKを広めることで、カメラの開発環境を変えたい」(同社)とし、よりCDKを使いやすい開発ツールにするためのエコシステム作りなどを実施し、CDK普及に向けた動きを強めている。
開発キットが存在しないプロセッサ
カメラ機能を実現する場合、イメージセンサーとともに不可欠なのが、イメージシグナルプロセッサ(以下、ISP)だ。ISPは、イメージセンサーからの信号を処理し、画像を作り出す処理を担当する。その名の通り、ISPはプロセッサの一種であり、CPUやGPUなどの他のプロセッサと同様に、動作するためにはファームウェアが必要になる。
ISPによる画像処理イメージ。イメージセンサーで撮影した画像(左)をISPで処理し、きれいな画像(右)を作り出す。昨今では、人の目に対してきれいな画像を作るだけでなく、人工知能など機器にとって“きれいな画像”を作る必要性も高まっている (クリックで拡大) 出典:ザインエレクトロニクス
CPUやGPUなどのプロセッサでは、各プロセッサに応じたファームウェアを開発するためのGUIベースのソフトウェア開発ツールをはじめ評価用ソフト/ボードなどで構成する「SDK」(Software Development Kit)が提供されている。ファームウェアの規模が大きくなっている昨今では、プロセッサそのものの性能よりも、このSDKの善しあしがプロセッサとして善しあしを決めるような極めて重要な存在であり、プロセッサメーカー各社はSDKの強化を競うように行っている。
プロセッサにとって欠かすことのできないSDKなのだが、「ISPベンダーがSDKを提供しているということは、これまで聞いたことがない」(ザインエレクトロニクス)と、ほとんど存在しなかった。そのため、スマートフォンなどの出荷ボリュームの多い用途では、ISPベンダーはSDKを提供する代わりに、ユーザーごとにファームウェアを開発して提供するケースが多かった。また、出荷数量の少ない用途では、スクラッチ開発でファームウェアを開発する必要があり、実質的にISP用ファームウェアの受託開発を専門とする企業などに任せる他ない状況だった。
ISPにSDKが存在してこなかった理由はいくつかある。カメラ機能を搭載するのは、カメラやスマートフォンなど出荷量が多いものがほとんどだったことも理由の1つだろう。もっと大きな理由としては、ISPのファームウェア開発の特殊性が挙げられる。ISPのファームウェアを開発するには、大きく2つの要素が必要になる。1つは、他のプロセッサと同じように、ソフトウェアプログラミングの要素である。そしてもう1つの要素が、画像を作る“イメージング”の要素であり、この“イメージング”の出来不出来がISP用ファームウェア、ひいてはカメラ機能の仕上がりに直結する。ただ、この2つの要素は、全くの別物であり、開発体制も多くの場合で、イメージング担当とプログラミング担当というように分業化されている。そのため、一部のプログラミングツールなどは存在したものの、イメージングとプログラミングの両要素を備えた開発環境は存在しなかったと考えられる。
SDK+イメージチューニングツール=CDK
そうした中でザインエレクトロニクスは、カメラ機能を搭載するアプリケーションが広がり、ISP用ファームウェアの開発数が急増することを見越し、イメージングとプログラミングの両要素を備えた開発環境を開発。一般的なSDKと、イメージチューニングツールの機能を併せ持つこの開発キットを“CDK”と名付け、「THP7312」などザインエレクトニクス製ISP専用のCDKとして2018年から販売を開始した。
CDKの核を成すGUIツール「THine Tuning Tools(略称:3T)」は、さまざまな画質の最適化をほぼパラメーター入力のみで行える。そして、画質最適化を実施した後は、その設定をバイナリーファイルとして出力できるだけでなく、ソースコードファイルとしても出力でき、プログラミング不要でISP用ファームウェアを作成することができる。いわば、イメージングの知識さえあれば、誰でもISP用ファームウェアを開発できるようになるわけだ。
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