VolkswagenとFordが自動運転開発で提携拡大へ:Argo AIに31億ドルを投資
Volkswagenは2019年7月、Ford Motor(以下、Ford)の自動運転部門であるArgo AIに31億米ドルを投資することで合意した。Argo AIは米国ペンシルベニア州ピッツバーグを拠点とする新興企業で、自動運転車(AV)向けのフルスタックプラットフォームの開発に注力している。
Volkswagenは2019年7月、Ford Motor(以下、Ford)の自動運転部門であるArgo AIに31億米ドルを投資することで合意した。Argo AIは米国ペンシルベニア州ピッツバーグを拠点とする新興企業で、自動運転車(AV)向けのフルスタックプラットフォームの開発に注力している。Volkswagenは、同社のモジュール式電気自動車プラットフォーム「MEB」を欧州のFordと共有することも発表した。
この契約は既存のパートナーシップを拡張するもので、VolkswagenとFordは、細分化した市場で生産と販売を拡大する手段として、商用車と中型ピックアップトラックを共同開発する。
今回の合意により、両社は高度自動運転車の開発でも引き続き協力していく。Volkswagenは26億米ドルを投資し、Fordから5億米ドル相当のArgo株を購入する。これによって、両社のArgo AI株の保有率は同等になるという。
この提携からは、自動車メーカーの間で、まだ立ち上がっていない高度自動運転車市場で足場を築くための競争が始まっていることがうかがえる。2030年までは完全自動運転車が大規模市場を形成する可能性は低く、自動運転車の競争は長期に及ぶことが予想される。自動車メーカーは巨額の金融投資を行って、ソフトウェア開発者の採用やパートナーシップの構築を実施し、顧客が納得する製品を開発する必要がある。
今回のパートナーシップによって、VolkswagenとFordの両社はこの課題に対するコスト負担を分担することができ、Argo AIは同社のAVプラットフォームで自動運転車を設計する大手自動車メーカー2社を顧客として獲得できる。
Fordのプレジデント兼CEOであるJim Hackett氏、ArgoのCEO兼共同創設者のBryan Salesky氏、VolkswagenのCEOであるHerbert Diess氏 画像:Argo AI
自動運転車市場は現在、パートナーシップや提携、投資取引が複雑に絡み合った状況にある。一部の企業は、ライドシェアサービスモデルの専門知識を獲得するための金融投資に注力している。その一例として、ソフトバンクとトヨタ自動車、デンソーは2019年4月に、Uberに10億米ドル出資している。
一方、IntelとMobileye、BMWのパートナーシップに見られるように、共同技術開発に関心を持つ企業もある。Fiat Chrysler AutomobilesとJaguar Land Roverは、自社モデルにWaymoの自動運転システムを搭載するために、Waymoに車両を提供している。
米国の市場調査会社であるThe Linley Groupでシニアアナリストを務めるMike Demler氏は、「自動運転車の道は現在、ロボタクシーと量産車に分かれている」と指摘している。同氏は、「もちろん重複する部分もあるが、ロボタクシーと量産車は2つの異なるセグメントだ」と述べている。つまり、別々のセグメントに対応する形で、タイプの異なるパートナーシップが形成されている。Demler氏によると、「多くのパートナーシップは独占的なものではなく、至る所で形成されている」という。
VSI Labsの創設者で主席アドバイザーを務めるPhil Magney氏は、「自動運転車分野では、毎週のように取引や買収が行われているように見える。重要なのは、市場動向に示されるように、フルスタックAVプラットフォームが高く評価されているという事実だ」と述べている。
自動運転車用プラットフォームの開発メーカー | 2019年における主な外部投資 |
---|---|
Waymo | ※Alphabet社の子会社であり、現時点で外部投資は無し |
Aurora | Sequoia CapitalやAmazonなどがシリーズBで投資、他企業も併せると合計で6億2000万米ドルを投資 |
GM Cruise | ソフトバンク・ビジョン・ファンドやホンダ(本田技研工業)を含む資本連合が11億5000万米ドルを投資 |
Arigo AI | Volkswagenが26億米ドルを投資(Fordから5億米ドル相当のArgo AI株式を購入) |
Uber ATG | トヨタ自動車、デンソー、ソフトバンク・ビジョン・ファンドが10億米ドルを投資 |
Lyft | Magnaが2億米ドルを投資 |
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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