IoT用無線モジュール技術と仮想・拡張現実感技術:福田昭のデバイス通信(194) 2019年度版実装技術ロードマップ(5)(2/2 ページ)
前回に続き、第2章のテーマ「情報通信」の後半部分を紹介する。今回のキーワードは、LPWA(Low Power Wide Area)無線ネットワークと、現実空間と仮想空間を融合させるクロスリアリティーだ。
現実空間と仮想空間を融合させるクロスリアリティー(X-R)技術
サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を融合させる重要な技術の1つに、仮想現実感(VR:Virtual Reality)技術や拡張現実感(AR:Augmented Reality)技術がある。ヘッドマウントディスプレイ(HMD)やメガネ型デバイス、スマートフォンなどを通じ、人間であるユーザーに仮想空間の情報を視覚や聴覚、あるいは触覚を通じて提供する。
VR技術は仮想空間を現実であるかのように体験させる技術である。視覚情報と聴覚情報は仮想空間の情報だけで構成される。HMDを使って現実空間の情報を遮断するので、仮想空間への没入感が高い。
AR技術はモバイル機器やウェアラブル機器などのディスプレイに、カメラで撮影した現実空間の画像とマーカーを使った仮想空間の画像を重ねて表示する技術である。
それから、ARを発展させたMR(Mixed Reality)と呼ばれる技術が登場している。MR技術では、透明なHMDあるいはメガネ型ディスプレイを装着することで、ユーザー周囲の現実空間の情報を視覚で取り入れるとともに、ディスプレイに仮想空間の情報を重ねて表示する。そしてユーザーの行動や操作などに応じて、仮想空間の情報が変化する。ユーザーは仮想空間の情報が、現実空間内に実際に存在するように感じられる。なおMRは「混合現実感」「複合現実感」とも呼ばれる。
最近では、VR、AR、MRともに「感」を省略することが少なくない。また、VRとAR、MRを総称して「クロスリアリティー(X-R:cross Reality)」と呼ぶことがある。
「2019年度版 実装技術ロードマップ」では、VR用HMDの製品例として2018年5月に発売された「Oculus Go」と、AR/MR用メガネ型デバイスの製品例として2017年1月に発売された「Microsoft HoloLens」の実機を分解して搭載部品や実装技術などを分析した結果を、実装基板のカラー写真や部品点数表などによって紹介している。詳しくはロードマップ本体を参照されたい(ロードマップの購入ページはこちら)。
(次回に続く)
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