100年に1度の大変革期を迎えたモビリティー産業:福田昭のデバイス通信(197) 2019年度版実装技術ロードマップ(8)(2/2 ページ)
今回から、第2章「注目される市場と電子機器群」で3番目の大テーマとなる「モビリティー」を紹介していく。2019年版のロードマップでは、「自動運転化」「コネクティッド化」「電動化」という3つのワードが含まれていることが、2015年版や2017年版とは大きく異なる点だ。
自動車産業の変革を示すキーワード「CASE」
2019年度版のロードマップでは、自動車産業の変革を4つのワードで示した。「Connected(コネクティッド)」「Autonomous(自動運転)」「Shared(シェアリング)」「Electric(電動化)」である。そしてこれらの頭文字をまとめて「CASE」というキーワードで表現した。
始めのワードである「Connected(コネクティッド)」は、自動車が双方向でさまざまな物や人につながり、自動車が車両の状態や周囲の道路状況などのデータをセンサーによって取得する。ネットワークを介してデータを収集して分析することで、新しい価値を生み出す。
次のワードである「Autonomous(自動運転)」は、いくつかの段階を経て「完全な運転自動化(レベル5)」へと開発が進みつつある。自動運転のレベルはレベル1からレベル5まであり、自動車メーカーはレベル3に相当する高度な自動運転技術を高級乗用車に搭載済みである。
ちなみにレベル1とレベル2は運転者が自動車の挙動を監視する低めの水準であり、レベル3からレベル5ではシステムが自動車の挙動を監視する高度な水準に達する。実際にはレベル3の技術を搭載していても、運転者の監視は現在のところ、法的には外すことができない。このため、現状ではレベル2までの運用にとどまっている。またレベル3以上の実現に向けた法整備が、国土交通省などによって進められつつある。
次のワードである「Shared(シェアリング)」は、自動車を個人が所有して利用するのではなく、複数の異なる人間が1台の自動車を必要な時間帯に利用する、というサービスである。大きくは「カーシェアリング」と「ライドシェアリング」の2つのサービスがある。
「カーシェアリング」は会員制のサービスで、駐車場などにあらかじめ用意してある車両の利用時間帯を会員が予約し、自家用車のように運転して利用する。世界の利用者は1000万人を超えており、日本でも100万人以上がカーシェアリングのサービスを利用しているという。「ライドシェアリング」は自家用車の相乗りサービスのことで、米国では「Uber(ウーバー)」や「Lyft(リフト)」などのサービスが従来のタクシーを席巻する勢いで普及している。
最後のワードは「Electric(電動化)」である。自動車は従来のガソリン車やディーゼル車などから、ハイブリッド車、さらには2次電池を使った電気自動車、燃料電池を使った電気自動車へと急速に電動化が進みつつある。自動車以外では電気鉄道でエレクトロニクス技術による改良が進んでいるほか、航空機でも電動化の動きが始まっている。ロードマップでは、これらの動きについても記述してある。
(次回に続く)
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