ラズパイの産業利用、知っておきたいメリット/デメリット:メカトラックスに聞く(2/3 ページ)
「Raspberry Pi」(以下、ラズパイ)の産業利用に対する注目度が高まっている。ラズパイを産業利用するのであれば、ぜひ知っておきたいメリットとデメリットを、メカトラックスの代表取締役である永里壮一氏に聞いた。
産業用ラズパイに向いている用途
では、産業用ラズパイで向いている用途とは何か。
永里氏によると、メカトラックスの顧客ベースでいえば、モニタリングの用途が最も多いという。センサーなどからデータを収集してきて蓄積したり、エッジコンピューティングのようにその場で解析したりといった具合だ。一方で、制御の用途はまだ少ないという。特に、例えば工場などで必要になる、遅延が許されない厳密な制御には、標準的な構成のラズパイは向いていない。さらに、医療機器のような高い安全性や公的な認証が必要となる用途にも、ラズパイを使うのは難しい。ラズパイは基本的に“自己責任”で使うものであり、例えばラズパイベースで医療機器(プロトタイプではなく実稼働品)を開発したとしても、性能保証のためのコストがかさむ可能性が高い。
産業利用時のデメリット
一方で、ラズパイを産業利用する際のデメリットとしては、主に電源とSDカードに起因する動作の不安定性が挙げられる。電源周りについては、2019年6月に発表された新モデル「Raspberry Pi 4 Model B」で多少は改善されている(電源ポートがUSB micro-BからType-Cに変更され、動作電流が最小2.5Aから3Aに引き上げられている)が、「恐らく電源周りが弱いという問題は、付きまとうのではないか」と永里氏は見解を述べている。
ただ、永里氏によれば、今は「拡張基板から電圧を供給することで電源周りを安定させる」という対処法も多くなっているという。事実、同社製の拡張基板は一部そのような構成を採用している。
SDカードやデータが壊れるといった、SDカード関連の不具合については「そもそもSDカード自体の信頼性がどうか、という問題もある」(永里氏)と前置きしつつ、「当社では、SDカードの型番を指定して調達し、ラズパイと組み合わせて耐久性試験をしている」と述べる。
このトラブルに対処する一つの方法としては、SDカードに書き込まない、つまりRead only設定でラズパイを稼働させることだ。例えば、センサーで収集したデータをSDカードに書き込まず、メモリ上で展開してすぐにクラウドなどにアップする。そうすれば、突然の電源断などによるSDカード破損のリスクを低くできる。
その他としては、消費電力が大きいので、バッテリーで使用することは難しい点がデメリットになり得る。ただし、もちろんこれは用途にもよるし、(PoCで使う場合は)PoCの目的の優先順位にもよる話ではある。例えばウェアラブル機器のPoCを開発する際、そもそもラズパイの使用は選択肢に挙がらないとは思うが、「A地点からB地点まで移動する10分間だけ、位置情報(座標)を取得できればよい」というのがPoCの最優先事項で、なおかつLinuxに詳しいメンバーがいるのであれば、「ラズパイは有力な選択肢になり得るのではないか」と永里氏は説明した。
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