ラズパイの産業利用、知っておきたいメリット/デメリット:メカトラックスに聞く(3/3 ページ)
「Raspberry Pi」(以下、ラズパイ)の産業利用に対する注目度が高まっている。ラズパイを産業利用するのであれば、ぜひ知っておきたいメリットとデメリットを、メカトラックスの代表取締役である永里壮一氏に聞いた。
PoC完成後の小ロット製造もサポート
先述した通り、メカトラックスは3GPiを製品化して以降、産業利用に向けたラズパイ専用モジュール(機能拡張基板)を市場に投入してきた。4G通信モジュール「4GPi(フォージーパイ)」、高精度A-D変換モジュール「ADPi」、電源管理/死活監視モジュール「slee-Pi(スリーピー)」などである。「これらは、問い合わせも含め顧客の要望をベースに開発してきたので、ある程度ニーズはつかんでいる製品だ」と永里氏は述べる。そのため、現時点では、今後の製品ロードマップも、セルラー通信用、電源管理用、データ入力(A-Dコンバーターなど)用のモジュール群を基本とし、ニーズに合わせて既存製品のバージョンアップを図っていくという。
メカトラックスの製品は、他社のラズパイ用モジュール(機能拡張基板/HAT[Hardware Attached on Top])ともできるだけ組み合わせられるようにGPIOピンの割当が工夫されているが、今後もこの方針で開発していく。「プロトタイプを手軽に作れることがラズパイの最大のメリットなので、他社のモジュールと一緒に使えないという状況はできるだけ避けたい」(永里氏)
さらにメカトラックスは、PoC後の実稼働品の製造までサポートしている。「産業用途では、実稼働品を5個単位、10個単位という小ロットで製造したいという要望も珍しくない。これらはPoC担当者が手作りで対応している場合が大半だが、こうした担当者は、データの解析や利活用など、PoCの本来の目的である、より付加価値の高い業務に注力するべきだ。当社は、高品質のラズパイ組み込み機器を必要な量だけスムーズに安価に製造するサポートもしている」(永里氏)
ラズパイは“破壊的イノベーション”
永里氏は、「ラズパイの産業利用は、いわゆる“破壊的イノベーション”なのではないか」と述べる。「安価でシンプルで使い勝手のいい技術が、高信頼性で高性能な、実績のある上位の技術を駆逐していく。それがまさに今、ラズパイによって産業用アプリケーションでも起きているのではないか。半導体の高性能化の限界も見えてきて、IoTに代表されるように、ユーザーが半導体に求める価値基準が大幅に変化している。そうしたトレンドの中で、より使い勝手がよいモジュールと受託開発、製造ソリューションを提供していくことが当社の役割だと考えている」(同氏)
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