電池事業を本格化する村田製作所、蓄電池工場を公開:買収から2年、技術融合の成果アピ―ル(3/3 ページ)
村田製作所が、電池事業の展開を本格化させている。ソニーの法人向け電池事業を買収して約2年が経過した2019年8月28日、東北村田製作所の郡山事業所(福島県郡山市)を報道関係者に公開。技術融合による初製品である「家庭用蓄電システム」など、電池事業に関する最新の取り組みを説明した。
リチウムイオン2次電池の製造工程を公開
FORTELIONを使った家庭用蓄電池システムは、電極材料の混合、塗装、プレスまでの「電極工程」を本宮工場(福島県本宮市)、その後のスリット、巻取り、組み立て、充放電、梱包までの「組み立て工程」を郡山事業所、システムとしての組み立てを行う「システム工程」を金津村田製作所(福井県あわら市)で行っている。
この日は、郡山事業所の組み立てから梱包までの工程が公開された。郡山事業所では、まず本宮工場で製造された正極、負極のシートを各電池のサイズに切ってから、絶縁用のセパレーターを挟んで円筒形に巻き取る。その後は、金属の管に入れ組み立て、電解液を注入してフタをし、水とブラシで洗浄して緑色のポリプロピレン製チューブをかぶせる。ここではX線を使って、内部の各シートが正しく巻かれているかを自動で全数検査していた。
次に、電池セルをトレイに並べ、倉庫内で7〜14日(電池の種類によって異なるという)かけて充放電、エージングを行う。その間に、開回路電圧(OCV)測定を5〜7回実施して各セルが品質基準を満たしているか確認している。説明担当者は「村田のセルは、ばらつきが少ないと高い評価をいただいている」と話していた。この工程も、作業員がセルを敷き詰めたトレイをラインに投入しデータを確認して以降は、倉庫への移動やOCV測定、不良品の排除など全てが自動化されている。
そして最後に、電池の外観に傷や汚れなどがないかを、検査機器や作業員による目視で検査し、梱包して出荷する。
こうして出来上がったセルが、金津村田製作所で家庭用蓄電システムとして組み立てられる。
各種用途で展開する蓄電システム
また、大型蓄電システムの蓄電モジュールやバッテリーマネジメントシステムなどに関しては、中国江蘇省無錫市の拠点で製造後、システムインテグレーターやメーカーが、パワーコンディショナーと合わせて組み立てているという。このシステムは日本のほか欧州、オーストラリア、カナダ、プエルトリコなど国内外で、公共施設などの非常用電源や工場の瞬時電圧低下対策、オフグリッド用などとして幅広く展開している。
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