Huaweiの5Gスマホ、HiSiliconの部品のみで5割を構成:製品分解で探るアジアの新トレンド(42)(1/3 ページ)
テカナリエは、5G(第5世代移動通信)対応スマートフォンを既に10機種ほど入手し、分解を進めている。その中でも注目の1台「Huawei Mate 20 X(5G)」は、HiSiliconの部品のみで約5割が構成されている。
2019年になり、各社から続々と5G(第5世代移動通信)スマートフォンの端末が発売されている。弊社は既に10機種ほどの5Gスマートフォンを入荷し、分解、解析を進めているところだ。
そんな中でも注目の一台が、中国のHuaweiから発売された「Huawei Mate 20 X(5G)」である。図1に、Mate 20 X(5G)の梱包箱、外観の様子と本体裏面カバーを外した様子を掲載した。外観は従来のスマートフォンと変わらない。3眼カメラが装備され、下部にはUSB Type-Cの端子が備わっている。カメラは40M画素、20M画素、8M画素と最新機能を備えているが、今夏(2019年夏)Huaweiから発売されている「Huawei P30 Pro」には仕様面で若干デグレードされたものになっている(P30 Proは4眼)。
Mate 20 X(5G)の最大の特長はミリ波やBand 19に対応し、5Gスマートフォンとしてリリースされたことだ。
裏カバーには指紋認証用のセンサーおよびコントローラーが埋め込まれている。指紋認証やディスプレイのタッチコントローラーは中国Goodix製のチップおよびチップセットで構成されている。この部分もP30 Proとほぼ同じである。数年前までは米SynapticsやCypress Semiconductorのタッチコントローラーをよく見かけたが、今は中国メーカー製品の搭載が最も進んでいる部位の一つとなっている。またMEMSマイクロフォンもGoertek製と中国製品が採用されている。5Gスマートフォンでもこうした部位は4Gと変わらない。5G、4Gに関わりなく中国チップの採用や置き換えが増えている。
図2は、Mate 20 X(5G)の信号および通信処理基板と主要チップの写真である。
基板は1枚構成(2階建てではない)だ(有償のテカナリエレポートには全チップの詳細な情報を掲載している)
基板には2つのプロセッサが搭載されている。一つは左側に拡大表示した5Gベースバンドプロセッサ。Huawei傘下の半導体メーカーHiSiliconのチップ「Balong 5000」である。チップはPackage-On-Package(POP)という、パッケージを2階建てにした方式が用いられ、上がDRAM、下がプロセッサという構造になっている。ベースバンドプロセッサには必ずDRAMが必要なので、POPで構成されることもあれば、パッケージ内部で接続と行うSilicon In Packageの場合もある。あるいは別チップで横置きも多い。Balong 5000はパッケージを重ねるPOP方式が用いられているが、かつては多くのベースバンドが使った技術で、さほど珍しいものではない。
このBalong 5000が5G通信を行っている。通信のためのデジタル処理を経て、RFトランシーバー、パワーアンプなどのチップ群と接続されるのであるが、これらトランシーバーやパワーアンプの一部(全部ではない)はベースバンドと同じくHiSilicon製だ。つまり、いわゆるチップセットの構成となっているわけだ。
図2の右側は、アプリケーションとベースバンド機能を1チップ化したHiSiliconのプロセッサ「Kirin 980」である。こちらは4Gまでの通信とCPU、GPU、NPU(Neural Processing Unit)などを統合するプロセッサで、2018年末から「Huawei Mate 20 Pro」やP30 Proなど多くの機種に採用されているものと同じである。こちらもPOPの実装を用いていて、上のパッケージには8GBのLPDDR4X、下のパッケージにはKirin 980が入っている。
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