Huaweiの5Gスマホ、HiSiliconの部品のみで5割を構成:製品分解で探るアジアの新トレンド(42)(2/3 ページ)
テカナリエは、5G(第5世代移動通信)対応スマートフォンを既に10機種ほど入手し、分解を進めている。その中でも注目の1台「Huawei Mate 20 X(5G)」は、HiSiliconの部品のみで約5割が構成されている。
「iPhone」も分離構造
2つのプロセッサが搭載されるのは、さほど珍しいことではない。代表的なものがAppleの「iPhone」である。
歴代のiPhoneでは、ベースバンドプロセッサはIntelやQualcommから購入し、アプリケーションプロセッサには自社開発の「Aシリーズ」を採用するという、“分離構造”を取っている。初期の4G端末に採用されているHiSiliconの「K3V2」やQualcommのチップも同様であった。Samsung Electronics(以下、Samsung)も、自社製ベースバンドを1チップ化したのは「Exynos 8」シリーズから(4年ほど前から)である。ベースバンドとアプリケーションプロセッサを1チップ化した製品が多くなっていることは事実だが、分離構造の製品も依然として出回っている。
5Gではトップ3社(Qualcomm、Samsung、HiSilicon)ともにベースバンド、アプリケーション分離でスタートしたわけだ。なお2019年9月、Huaweiは次世代プロセッサ「Kirin 990」の仕様を発表した。Kirin 990ではベースバンドとアプリケーション機能が1チップ化されることが明言されているが、製品の発売後、実際に分解/解析が済んだら本連載でも取り上げる予定だ。
HiSiliconだけで5Gスマホの半分を構成できる
図3はMate20 X(5G)の内部の機能を持つ半導体の国籍分布、HiSiliconの機能分布を円グラフにしたものである。
図3から分かる通り、おおよそ半数をHiSilconのチップセットで賄っている。言い換えればHiSilicon製チップだけで5Gスマートフォンの半分は構成できるということになる。採用の多い順では米国、中国、欧州となっている。詳細は掲載しないが米国製は、中国製に置き換え可能な機能チップである。
日本製や台湾製の部品も採用されてはいるが、センサーやメモリなど欧州メーカーや韓国メーカー製でもよい部品だ。“HiSiliconと中国製で6割弱の分布”というのが、Huaweiの5G端末の状況である。
図3の右側にHiSiliconチップの機能分布を示した。通信系のRF(パワーアンプやトランシーバー)が最も多い。次いで電源ICやオーディオなどのアナログ、アナログとデジタルをミックスしたWi-Fiなどのチップがくる。通信からアナログまで網羅的にシステムを構築できる全チップをHiSilicon1社で構成できているわけだ。
こうした網羅的、包括的なプラットフォームを作れるメーカーは現在世界に4社しかない。Qualcomm、Samsung、台湾MediaTekと中国HiSiliconである。Qualcommは米国企業だが、他は全てアジアの企業だ(日本は完全に脱落)。
こうした状況を見ると、やはり21世紀は「アジアの時代」なのだと再認識せざるを得ない。日本は完全に自滅した形だが、SamsungやHiSiliconは、2019年の5Gスマートフォンに合わせてきっちりとプラットフォームを提供できていることから、すさまじい開発力と、スケジュールを死守するマネジメント能力が大いに機能しているものと思われる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.