熟練の職人技が支える、パナソニックの補聴器製造現場:2019年で60周年を迎えた(2/4 ページ)
パナソニックの補聴器事業が、2019年に60周年を迎えた。創業者の一声から始まったという事業は、形や機能など同社ならではの技術力を生かして発展を続けており、近年はテレビと直接つながったり、スマートフォンアプリで操作が可能になったりと、時代に合わせた進化を遂げている。一方で、ユーザーそれぞれの耳穴に合わせたオーダーメイド品は、造形で3Dプリンタを使っているものの、その他作業はもっぱら熟練の技術者のノウハウに支えられているという。今回、その製造現場を取材してきた。
「パナソニックグループでも珍しい」工程のまま残り続ける
オーダーメイド品はかつては事業の主力として展開していたが、技術の発展により小型化が進んだことなどから、現在は売上の7割程度が既製品となっている。しかし、「オーダーメイド品を愛用する人のほか、耳の中が薄かったり狭かったりと既製品が入らない人もいるため、そういった人のために残り続けている」という。
補聴器事業の製造の中核拠点はマレーシアにある工場であり、既製品に関しては、佐賀製造所では出来上がった製品の検査や顧客に応じたカスタマイズの対応、修理を行っている。ただ、オーダーメイド品の製造については、基板の製造を除いて、全て佐賀製造所で行っている。
パナソニック補聴器の佐賀製造所では、680m2の敷地内で計23人が勤務。うち補聴器修理業務など行う人員が11人、製造に関する人員は12人だが、実際のオーダーメイド品製造作業を行う「エキスパート」は3人だという。オーダーメイド品の製造は「ノウハウを身に付けるのに10年以上は必要だ」といい、実際勤務するスタッフも最年少が30代前半で、30年以上にわたって勤務する50代半ばのベテランスタッフが『師匠』となって活躍。「技術者による手作業の工程が、変わらない形で残り続けているのは、パナソニックグループとしても珍しい」という。
熟練のノウハウで成り立つオーダーメイド品
オーダーメイド品製造の流れは、下記の通りだ。
- 顧客の耳の中をシリコンで型取る
- 耳穴型を3Dスキャンし、スキャンデータをもとにCADで技術者が余分な箇所を削ったうえで、マイクや基板の位置を決める
- 出来上がったCADデータをもとに、専用の3Dプリンタでシェルを造形
- シェルにスピーカーを固定し、マイク、補聴器用ICが載った基板とハンダ付けしたうえで接着
- 耳の中のあたりがよくなるように仕上げ、ラッカーを塗装
この詳細について、順番に説明していく。
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