TSMC、5G好調で設備投資150億米ドルに引き上げ:7nmチップ需要が急増
TSMCは、5G(第5世代移動通信)スマートフォンおよび関連ネットワーク機器の見通しが改善されたことを受け、2019年の設備投資額を150億米ドルに引き上げたことを明らかにした。
TSMCは、5G(第5世代移動通信)スマートフォンおよび関連ネットワーク機器の見通しが改善されたことを受け、2019年の設備投資額を150億米ドルに引き上げたことを明らかにした。
同社は、7nmチップの需要が急増したことを受け、2019年の設備投資額を当初の目標である約100億米ドルから150億米ドルに引き上げた。追加予算のうち約15億米ドルを7nmチップの増産に、25億米ドルを2020年前半に商用生産を予定している5nmプロセスの生産に充てるという。
2020年の投資額引き上げも「ほぼ確実」
TSMC のCEO(最高経営責任者)を務める C.C. Wei氏によると、2020年の設備投資額を2019年の水準から引き上げることが「ほぼ確実」だという。同社は通常、年始にその年の設備投資の計画を立てている。
米国と中国間の貿易戦争が継続している中、TSMCは、Huaweiなどの中国の顧客からの需要が増えると予想する数少ない半導体メーカーの1つだろう。TSMCは、「当社の400社以上の顧客のうち100社以上が中国企業だ」と述べている。
Wei氏は台湾の台北で行った四半期業績発表で、「N7(7nmプロセス)は、当社の2019年ウエハー売上の25%以上を占める見通しだ。5Gの世界的な普及や、高性能コンピューティング(HPC)やモバイルなど他のアプリケーション向けの需要の急増によって、2020年にはさらに高い割合を占めると予想している」と述べた。
Wei氏は地域の詳細については明らかにしていないが、「世界の一部の地域では、通信事業者が5Gの展開を加速している。5Gの勢いは増している」と述べている。一部のアナリストは、その需要の背後には中国がいると推測している。
英国に拠点を置く市場調査会社Arete Researchでシニアアナリストを務めるBrett Simpson氏は、TSMCの四半期業績発表中に行った同社との電話会議で、「現時点ではっきりいえるのは、TSMCは中国の顧客と共に非常に健全な転換点を迎えているということだ」と述べていた。
これに対しWei氏は、「当社はこの成長に満足しており、これからも最先端技術を提供して中国の顧客企業をサポートする考えだ。TSMCは中国市場と共に成長していく」と答えていた。
TSMCは2019年5月に、「世界的な半導体エコシステムの他の企業が、米国の要請に従って中国のエレクトロニクス企業への供給を中止するとしても、当社はHuawei向けのチップの製造を継続する考えだ」と述べている。
米国の市場調査会社IC Insightsによると、TSMCが上方修正した設備投資額は、ドル換算で2019年のSamsung Electronicsおよび、Intelの予想支出額と同程度になる見通しだという。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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