RISC-V上にオープンなセキュリティ基盤構築へ:TRASIOが活動開始
セキュアオープンアーキテクチャ・エッジ基盤技術研究組合(TRASIO)は、オープンソースの命令セットアーキテクチャ(ISA)である「RISC-V」上に、オープンなセキュリティ基盤を構築するための研究開発に取り組む。
産業用市場における実用化目指す
セキュアオープンアーキテクチャ・エッジ基盤技術研究組合(TRASIO:Technology Research Association of Secure IoT Edge application based on RISC-V Open architecture)は2019年11月、オープンソースの命令セットアーキテクチャ(ISA)である「RISC-V」上に、オープンなセキュリティ基盤を構築するための研究開発に取り組むと発表した。
TRASIOは、「AIエッジ向けセキュリティ技術の試験研究」を行うため、2019年8月に設立された技術研究組合である。デンソーの半導体設計子会社であるエヌエスアイテクスや慶應義塾、産業技術総合研究所(産総研)、セコムおよび、日立製作所が組合員となっている。
TRASIOは具体的な活動として2つ挙げている。1つは、「半導体チップのセキュリティを検証可能とするため、RISC-Vオープンアーキテクチャを活用し、セキュリティのハードウェア・ソフトウェア基盤技術をホワイトボックス化する試験研究の実施」である。もう1つは、「セキュリティ技術の協調領域として開発技術をオープンにし、AIエッジデバイスの実用化と普及の促進を図る」ことである。
そこで今回、産業用途に適用できるオープンなセキュリティ基盤を構築することにした。これらの研究成果は、日本が強みとする産業市場のさらなる活性化につながるとみている。
TRASIOは今後、新たなユーザー会員を募るとともに、開発成果を普及させるための活動などにも取り組む予定である。
なお、TRASIOは新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から事業委託を受け、2019年10月から試験研究を始めた。既に、「信頼実行環境(TEE:Trusted Execution Environment)」を核として、「ハードウェア信頼起点(H/W Root of Trust)」から「産業即応化」「社会実装」まで、セキュリティ基盤構築に必要な技術レイヤーの垂直統合を実現するための研究体制を整えているという。
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