TIのGaNパワー半導体ビジネスの狙いと勝算:ゲートドライバとの組み合わせで(2/2 ページ)
Texas Instruments(TI)はパワー半導体市場でどのような戦略を立て、競合に対抗していくのか。同社ハイボルテージ・パワー部門バイスプレジデント兼ジェネラル・マネージャを務めるSteve Lambouses氏にインタビューした。
2020〜2021年に需要は急拡大する
――GaN-FET製品のラインアップ、採用実績を教えてほしい。
Lambouses氏 耐圧600Vの「LMG3410x」を展開している。65Wクラスに対応するオン抵抗150mΩ品から、10kWクラスのオン抵抗50mΩ品までがある。
既に多くの採用例がある。サーバの電源やサーボモーター駆動用途などさまざまだ。
今後も製品ラインアップを拡充していく方針で、より大電流に対応する製品や、800V、900Vといったより耐圧の高い製品を開発、投入していく予定だ。
――今後、どのようにGaN-FETの需要が拡大していくと予想しているのか。
Lambouses氏 サーバや5G(第5世代移動通信)基地局、有機ELテレビなどでは消費電力が増大し、さまざまな消費電力規制を満たすことが難しくなってきている。そのため、GaN-FETを用いた低消費電力化の動きは加速するはずだ。
もちろん自動車分野でも、電気自動車の走行距離を延ばすには、変換効率が高く、かつ、小型、軽量の電源システムを実現できるGaN-FETへのニーズは高まる。
ただ、GaN-FETを採用するには、電源システム全体の再設計が余儀なくされるため、現状、多くの引き合いを得ているものの、実際に搭載するまでに時間がかかってしまう。おそらく、2020〜2021年に、家電分野や産業機器分野で、TIのGaN-FETデバイスの採用例は、急速に伸びる見込みだ。車載分野では、2024〜2025年ごろに、需要が急拡大するだろう。
GaNに限らず、IGBT、SiCに向けてもゲートドライバを積極展開
――ハイボルテージ・パワー部門の主力製品であるゲートドライバの見通しは。
Lambouses氏 600〜1200Vといった高耐圧の電源システムでは、効率的な絶縁型ゲートドライバが使用されるようになり、中長期的に需要は増え続ける見通しだ。TIとしても、長期的な製品開発ロードマップを作成し、事業強化を継続していく方針だ。
ゲートドライバ市場でのTIのシェアはまだまだ不十分であり、シェアを高める余地は多く残されている。
TIの絶縁型ゲートドライバは、静電容量式の絶縁型ゲートドライバであり、従来のフォトカプラを用いた絶縁型ゲートドライバと異なり、経時劣化など使用上の制約が少ない特長がある。他にも高速スイッチング対応や充実した保護機能、自社製造によるコスト競争力といった強みも兼ね備えている。GaN-FET用だけでなく、IGBT用、SiC用も含め、ラインアップを拡充し、あらゆるニーズに応えていく。
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