NVIDIAの自動運転向け新SoC「Orin」、性能はXavierの7倍:170億個のトランジスタを搭載
NVIDIAのCEO(最高経営責任者)を務めるJensen Huang氏は2019年12月16〜19日に中国の蘇州で開催した「GPU Technology Conference」に登壇し、同社の自動車ポートフォリオにおける次世代SoC(System on Chip)「Drive AGX Orin(以下、Orin)」を紹介した。
NVIDIAのCEO(最高経営責任者)を務めるJensen Huang氏は2019年12月16〜19日に中国の蘇州で開催した「GPU Technology Conference」に登壇し、同社の自動車ポートフォリオにおける次世代SoC(System on Chip)「Drive AGX Orin(以下、Orin)」を紹介した。
Orinは、2年弱前の「CES 2018」で発表された「Drive AGX Xavier(以下、Xavier)」の後継チップとなる。Xavierは自動車のAI(人工知能)アクセラレーション向けSoCで、現在NVIDIAのフラグシップ製品である。
Orinは170億個のトランジスタを搭載し、90億個のトランジスタを搭載するXavierのほぼ2倍のサイズで、約7倍の性能(INT8データで200TOPS)を提供する。Orinは、Xavierの倍の大きさだが、電力効率はXavierの3倍だという。
NVIDIAの自動車担当シニアディレクターを務めるDanny Shapiro氏は、「Orinで大きく向上したのは、TOPS(演算性能)だけではない。非常に複雑なワークロード、つまり自動運転車の内部で実行しなければならない非常に多様で大量のアルゴリズムを処理するために設計されたアーキテクチャも大きく向上している。これらの処理は当面はXavierで行い、将来的にはOrinで行うことになる」と述べている。
Orinは、Armの64ビットCPU(ARM64)「Hercules」を12コアとNVIDIAの次世代GPUコア、新しいディープラーニングアクセラレーターとコンピュータビジョンアクセラレーターを搭載するとみられるが、同社はこれについては明らかにしていない。
Orinは、自動車の機能安全規格「ISO 26262」の中で最も厳しい水準とされる「ASIL-D」レベルの安全性を実現し、多くのニューラルネットワークやその他のアプリケーションを同時に実行する必要がある(レベル2からレベル5の)自動運転車やロボティクスで使用されると予想される。Orinは、NVIDIA Driveプラットフォームを活用できるように、Xavierとのソフトウェア互換を備える。
Orinファミリーには、単一アーキテクチャベースのさまざまな構成があり、顧客が計画している2022年の製品化に合わせた発売を予定しているという。
中国Didiとの提携を発表
NVIDIAは、中国のDidi Chuxing(滴滴出行、以下Didi)とのパートナーシップについても発表した。Didiは、アジアや中南米、オーストラリアで事業展開するアプリベースの配車サービス(Uberに似たサービス)プロバイダーである。
Didiは、同社のデータセンターでのトレーニング(学習)にNVIDIAのGPUを使用し、レベル4の自動運転車の推論にはNVIDIA Driveプラットフォームを使用している。Didiは2019年8月、自動運転車部門を分社化した。その他、Didiは、NVIDIAの GPUをベースにした顧客向けの仮想GPUクラウドサービスも開始するという。
NVIDIAは、NVIDIA Driveプラットフォーム向けに開発したディープニューラルネットワーク(DNN)の事前トレーニングモデルを自動運転車開発企業が自由に利用できるようにすることも、併せて発表した。信号機や標識の他、車両と歩行者、自転車などの対象物を検出するモデルも含まれるという。
重要なのは、これらのモデルが、NVIDIAが提供するツールを使ってカスタマイズできることと、協調機械学習(フェデレーションラーニング)を使ってアップデートできることだ。協調機械学習では、学習した結果を基にクラウド上のモデルをアップデートする前に、エッジで学習を行う技術。プライバシーを保護できるとしている。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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