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変化に見舞われた2019年のサプライチェーン分裂に貿易摩擦

2019年のエレクトロニクス業界のサプライチェーンは、たった1年の間にかなりの混乱状態に陥った。かつてはこのような状況に達するまでに、数十年間かかっていたというようなレベルだ。

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 2019年のエレクトロニクス業界のサプライチェーンは、たった1年の間にかなりの混乱状態に陥った。かつてはこのような状況に達するまでに、数十年間かかっていたというようなレベルだ。1990年代は、サプライチャネルにおいて激しい合併買収活動が繰り広げられたことでよく知られているが、2019年は「分裂の年」として特徴付けられるのではないだろうか。

 例えば、大手半導体メーカーが突如として、“代理店のリストラ”を行った他、グローバルディストリビューターが、独自のグループを設立すると発表している。また中国では、敵対的買収が仕掛けられている。そして、貿易や関税、不買運動などが、サプライチェーンパートナーシップに大きな打撃を与えた。こうした状況の背景には、米国の製造業がここ3年の間に、初めて縮小傾向に転じたことや、企業合併によって受動部品市場の様相が一変したことなどがある。

 2019年のエレクトロニクス業界のサプライチェーンは、このようなさまざまな出来事によって方向付けられた。

Texas Instruments(TI)とサプライチャネル

 TIは、今までにないような動向の中で、グローバルパートナーであるAvnetやWPGをはじめとする複数の代理店との契約を終了すると発表した。TIはこれまで、販売代理店との間で友好的な関係を築いてきた。

 TIの広報担当者は、EPSNews(EE Timesの姉妹媒体)の取材に対し、「われわれはここ数年の間、当社の戦略に即した販売網を進展させることで、顧客企業各社との間でより緊密かつ直接的な関係を構築してきた。このような直接的な関係性を築くことで、さまざまなビジネスが流通チャネルから流出してしまうことがなく、必要な代理店の数も少なくて済む」と語っている。

 2019年会計年度におけるAvnetの売上高は195億米ドルで、このうちTI製品の売上高が約10%を占めているという。

Avnetら3社がアソシエーションを設立

 これまで、米国の電子部品の製造・流通に関わる業界団体である電子部品産業協会(ECIA:Electronic Components Industry Association)が過去数十年間にわたり、販売チャンネルのサポートや標準規格設定など、中枢的役割を担ってきた。ECIAは、電子部品流通協会(NEDA:National Electronics Distributors Association)と、電子部品協会(ECA:Electronic Components Association)の2つの業界団体が、2010年に合併して設立された。しかし2019年8月に、業界最大手のディストリビューターであるArrow ElectronicsとAvnet、Electrocomponentsの3社が、ECIAから脱退し、GEDA(Global Electronics Distributor Association)を設立した。

 今回の動きはECIAにとって、さまざまな面から大きな打撃となる。ECIAの会費は、企業規模に応じて決まるが、この3社のディストリビューターの世界合計売上高は、500億米ドルにも達するという。また3社とも、認定を受けたサプライチャネル向けの専用情報サイトであるECIAauthorizedに、自社の在庫情報を提供している。

 GEDAは、ディストリビューターを重視する度合いがECIAよりも高いと報じられている。

長引く貿易摩擦

 米国による対中関税引き上げの動きも不透明だ。2019年12月15日に発動される予定となっていた関税15%への引き上げは回避し、米中間で合意には達したものの、この先どうなるかは分からない。

 エレクトロニクス企業は、関税を相殺するために価格を引き上げるなどコストの調整を行っている。加えて、中国以外のサプライヤーを探したり、事業拠点を中国外に移したり、あるいは中国から完全に撤退したりといった対策も進めている。

 米国によるHuaweiの“狙い撃ち”は、米国のチップメーカーに悪影響を及ぼし、貿易の不確実性は設備投資を凍結させた。

 製造業に関わるメーカーは、米中貿易摩擦の収束の見通しが立つまで、思い切った投資の決断をしにくいだろう。ただし、米ISM(Institute for Supply Management:供給管理協会)の幹部は「貿易問題はサプライチェーンを圧迫し続けているが、以前ほどではない」とコメントしている。

米国の製造業指数が低下

 ISMは2019年9月、製造業指数が3年ぶりに縮小したと発表した。縮小傾向は2019年末まで続き、4カ月連続で縮小している。ISMによれば、世界の貿易摩擦問題は米国の製造業者にとって最大の関心事だという。ISMの製造業指数は、新規の受注と全体的な需要が停滞したことにより、同年11月に0.2ポイント低下して48.1となった。新規受注は1.9ポイント低下して47.2となり、2012年以来の最低レベルに低下した(製造業指数は50を超えると、拡大基調にあると判断される)。一方でISMは、2020年3月までには、50を超える月が出てくるのではないかとみている。

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

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