AI技術の進化で注目が高まるReRAM:市場の急成長はまだ先でも(2/2 ページ)
次世代不揮発メモリの一つである抵抗変化メモリ(ReRAM)は、その大部分がまだ研究開発の段階にあるが、AI(人工知能)技術の進化で、注目が高まっている。
ReRAMの採用が期待される分野
Handy氏は、「ReRAM市場に関しては、ニューラルネットワークのハイプサイクルの他に、2つの見解がある。1つは、EERAMなどのように、半導体チップに内蔵されたスタンドアロン品で、もう1つは、マイクロコントローラーやSoC(System on Chip)の組み込みメモリだ。スタンドアロン向け用途は、バックアップバッテリーを組み合わせることで、電源異常時に情報が失われなくなるため、SRAMの代替として魅力的である。また、NOR型フラッシュメモリが28nmプロセスで壁に当たってしまったことから、組み込み向けシナリオも非常に興味深い。このため、大手ファウンドリーや、マイコンメーカー各社は、28nmプロセス以降もメモリの微細化を実現するためにはどうすべきなのかを模索している。ReRAMは、この先非常に有望だ」と述べている。
Weebit Nanoは、ニューラルネットワーク向けにReRAMを利用すべく熱心な取り組みを進めているメーカーの一つだ。それでも、同社のCEOであるCoby Hanoch氏は、最初に市場に登場するのは、もっと平凡な用途向けではないかとみているようだ。しかし同氏は、「全般的にReRAMは、確実に前進していると言える。一部の大手メーカーは現在、ReRAM開発にかなりの力を注いでいる他、さまざまな新興企業も進展を遂げている」と述べる。
Hanoch氏は特に、顧客企業向けに提示している同社の技術について、かなりの自信を持っているようだ。同社は最近、コンシューマーエレクトロニクスや産業組み込みシステム、電気通信、ネットワークアプリケーションなどに向けたメモリソリューションのプロバイダーである中国XTX Technologyとの協業を発表し、Weebit Nanoの酸化ケイ素ReRAM技術を適用していく考えであることを明らかにした。Hanoch氏は、「われわれは現在、製品化および実用化に向けて前進しているところだ。2021年までに最初の商取引を実現し、ReRAMをさらに進展させる可能性は十分にある」と述べる。
Hanoch氏は、「ここ12カ月の間に、ReRAMの製品化に対する関心が高まったということ自体が、重要なマイルストーンだといえる。Weebit Nanoは、100万回を上回る耐性サイクルを達成したことにより、自社技術を強化している。現在では、150℃で10年間の保持能力を達成するというさらなる堅牢化を実現し、実用化への準備が整った」と述べている。
Weebit Nanoはこれまで、ニューラルネットワークに関する取り組みについて公にしてきたが、Hanoch氏は、「当社にとって、まず第1段階は、組み込み市場だ。ReRAMは組み込み市場において、非常に大きな強みを持っている」と続けた。これには、NAND型フラッシュメモリや外付けの不揮発メモリをReRAMで置き換えるといったことも含まれている。Hanoch氏はReRAMはMRAMよりも良いと主張する。Weebit Nanoの酸化ケイ素(silicon oxide)ReRAMは、既存の製造ラインに容易に組み込むことができる標準的な材料を用いているからだ。「われわれのReRAMは、1〜2枚のマスクを追加するだけで製造できる」(Hanoch氏)
Hanoch氏は、より多くの製品化が実現し、顧客が自信を得ると、ReRAMは今後3〜4年で急成長するだろうと述べる。ただし、ニューロモーフィックコンピューティングへのReRAMの応用は、さらに先になると同氏はみている。「製品化する前にやらなくてはならないことが多数ある。だが、ReRAMの技術が確立されれば、恐らくニューロモーフィックコンピューティングはReRAMにとって最大規模の市場になるのではないか」(同氏)
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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