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2020年は“ローラブルディスプレイ元年”に?ディスプレイ産業フォーラム 2020(3/4 ページ)

市場調査会社であるIHS Markit(テクノロジー系の大部分をInfoma Techが買収し、現在移管中である)が2020年1月30〜31日に、東京都内で「第38回 ディスプレイ産業フォーラム 2020」を開催。今回は、FPDの新しい技術についてまとめる。

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2019年は「折りたたみOLED元年」

 「2019年は、折りたたみディスプレイ元年となった」――。ディスプレイ部門 アソシエイトディレクターのJerry Kang氏は、こう述べた。2019年は、Samsungの「Galaxy Fold」、中国Royoleの「FlexPai」、Huaweiの「Mate X」と折りたたみ型スマートフォン(折りたたみスマホ)が相次いで発売され、話題となった。


Samsungは、「Galaxy Fold」に続く折りたたみスマートフォン第2弾「Galaxy Z Flip」を2020年2月に発表した 画像:Samsung(クリックで拡大)

 IHS Markitの予測によると、折りたたみOLEDの出荷予測は、2019〜2026年にかけて年平均成長率93.9%で成長し、2020年には390万台、2026年に7300万台に達するとしている。Kang氏は「もっと迅速に価格を下げなければ、折りたたみスマホの市場を伸ばすことはできないだろう」と指摘する。折りたたみスマホは、機種によっては従来のスマホに比べて相当高額になる。上記で挙げた3機種の価格は、FlexPaiは約14万円と既存のハイエンド機種よりやや高い程度だが、Galaxy Foldは約24万円、Mate Xは約26万円である。


折りたたみOLED市場の成長予測 出典:IHS Markit(クリックで拡大)

 Kang氏は「持ちやすさや使いやすさも向上する必要がある」と続けた。折りたたみスマホには、内側に折りたたむタイプと外側に折りたたむタイプがあり、それぞれ一長一短がある。内側タイプだと、設計は複雑だが使い勝手はよい。外側タイプは、設計はシンプルだがディスプレイが表に来るので使い勝手としてはイマイチである。

 Kang氏は、折りたたみOLEDにおける3つのキーテクノロジーについて説明した。まずはカバーレンズの技術だ。ここにカラーレスポリイミドか超薄型ガラスのどちらを使うかが議論の焦点になるという。カラーレスポリイミドは適切な光学特性と曲げ半径を備えているが、硬い物には弱い。超薄型ガラスは、特性は完璧だがもろい。スマホの構造などによって、適した材料を使うことが重要だ。

 2つ目はタッチ機能を統合したフレキシブルディスプレイの開発だ。Kang氏は「現在、複数の種類が開発されているが、タッチパネル回路をパネルに薄膜封止(TFE:Thin Film Encapsulation)する方法が、折りたたみディスプレイには最も適しているのではないかといわれている」という。例えば、Samsungの「Y-OCTA(オクタ)」だ。「他のセンサーよりも優れた曲げ特性を実現できる。ただ、低温で製造しなくてはならず、品質が安定しないことで苦労している。そのため、Apple「iPhone」への採用が遅れているとの話もある」(Kang氏)。Samsung Displayは、T-OCTAのフレキシブリティを高めた「F-OCTA」の開発を進めるという。

 3つ目が偏光板だ。Kang氏は、「偏光板はフレキシブルOLEDの中で最も厚い層の一つだが、折りたたむことによって特性が劣化する可能性がある。そのため、できるだけ薄くしていくことが必要だ」と説明する。同氏によると、Galaxy Foldの偏光板の厚みは60μmで、「Galaxy S10」に比べて40μm薄いという。偏光板においては、CF(カラーフィルター)を薄膜封止した“CF on TFE”で置き換えを図る動きもある。CF on TFEは、パネルの反射光の低減、低消費電力化、より曲がりやすい、といった特長があるが、既存の偏光板に比べてコスト効率が劣る。フォトマスクを追加する必要があり、ポスト処理を低温で行わなければならないからだ。偏光板の最適化と置き換えにどう対処するかが大切だとKang氏は述べた。

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