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CASE時代のクルマ産業、ボトルネックになり得る半導体は何か湯之上隆のナノフォーカス(22)(3/4 ページ)

CASE(Connected、Autonomous、Shared & Services、Electric)の波が押し寄せている自動車産業。それに伴い、1台当たりのクルマに搭載される半導体の量も増加の一途をたどっている。では、そんなCASE時代の自動車産業において、“ボトルネック”となり得る半導体とは何か。

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どれだけのメモリ容量が必要なのか?

 「レベル4〜5」の完全自動運転車には、最先端プロセスで製造されたAI半導体と5G用通信半導体が必要不可欠になる。それに加えて、AI(OS)や各種データをストレージするための大容量SSDと、AI半導体が動作するためのワーキングメモリとして高速大容量のDRAMが必要になる。

 2019年12月11日〜13日に開催された「SEMICON Japan」のテクノロジーシンポジウムで、米Micron Technology(以下、Micron)は、レベル2の自動運転車に対して、レベル4〜5の自動運転車では、DRAM搭載容量は10倍、NAND(つまりSSD)は100〜150倍になると発表したそうである(参照:日経クロステック:服部毅、テクノ大喜利、2019年12月17日、脚注1)。

 では、実際にそれはどのくらいの容量になるのか?

 米調査会社のGartnerによると、自動運転化されたコネクテッドカー1台当たりのデータトラフィック量は、年間280PB(ペタバイト)を超えるという(参照:自動運転ラボ、2019年11月13日)。1日当たりに換算すると約767TB、1時間当たりで約32TB、1分間当り約533GB、1秒当たり8.8GBということになる。

 筆者は、巨大なAI(OS)を格納し、最新の地図情報や各種データをストレージするためには、100TBくらいのSSDが必要なのではないかと予想している。

 そして、このような膨大なデータを高速処理するために、Micronは、データ通信速度を一気に高めたGDDR6という規格のDRAMを開発している(MicronのWebサイト)。

 DDRとは、Double Data Rateの略で、DDR2はDDRの2倍の転送速度を持つDRAMである(図4)。同様に、DDR3はDDR2の2倍、現在主流のDDR4はDDR3の2倍の転送速度を持つ。マイクロンが開発しているというGDDR6は、DDR5を一気に飛び越えて、DDR4の4倍の転送速度を持つDRAMということになる。


図4:DDR規格の推移 出典:Cadence Design SystemsのWebサイトのデータを基に筆者作成(クリックで拡大)

 そして、さまざまな情報を考慮すると、「レベル4〜5」の自動運転車には、 GDDR6を70〜80 GB搭載すると推定される。現在、最も集積度の高いDRAMは8GBであるが、DRAMeXchangeのWebサイトをみると、8GBは1GBを8枚スタックしたものであることが分かる。

 従って、「レベル4〜5」の自動運転車にGDDR6が80GB必要と仮定すると、現在のところ1GBのDRAMが80個必要ということになる。「レベル4〜5」の自動運転車が、いつ頃、どのくらい普及していくか筆者には分からないが、仮に1000万台なら1GBのDRAMが8億個、3000万台なら24億個必要という計算になる。それは、DRAM市場にとって、どのくらいのインパクトをもたらすだろうか?

DRAM出荷額と出荷個数

 DRAMの出荷額と出荷個数の推移を図5に示す。DRAM出荷額は、激しく上下動していることが分かる。例えば、Windows95が発売された1995年に大きなピークがあり、2000年のITバブルの際もピークが見られる。また、2008年に起きたリーマン・ショック後に大きく落ち込み、最近では“スーパーサイクル”と呼ばれた2017年頃から出荷額が増大し、2018年にピークアウトして2019年は大不況に突入した。


図5:DRAMの出荷額と出荷個数の推移(〜2019年) 出典:WSTSのデータを基に筆者作成(クリックで拡大)

 この原因は、DRAMが足りないときは価格が高騰し、つくりすぎると価格が暴落するからである。ピークを持つ事情はその時々で異なるが、4〜5年サイクルで価格の高騰と暴落を繰り返しており、その周期のことを“シリコンサイクル”と呼んでいる。

 しかし、DRAMの出荷個数には、そのような周期はない。2003年頃まで緩やかに増えていき、その後、急速に出荷個数が増大する。これは、21世紀になって、中国をはじめとするアジア諸国が経済発展を遂げ、携帯電話、PC、デジタル家電などの需要が高まったため、それに搭載されるDRAM個数も増えていったと考えている。

 ところが、2010年以降は、DRAM出荷個数は150億個前後で横ばいとなる。その理由は、DRAMメーカーが次々と淘汰されていったことによる。図6に示したように、2011年には既に4社に集約された。ところが、2012年にエルピーダメモリが倒産してMicronに買収されたため、2013年以降は、Samsung Electronics、SK Hynix、Micronの3社が96%の市場シェアを寡占化するようになった。


図6:DRAMの企業別シェア(〜2019年第3四半期) 出典:DRAMeXchange、IHS Markit、TrendForceのデータを基に筆者作成(クリックで拡大)

 これら3社は、「作りすぎると価格が暴落する」ことが身に染みて分かっているため、お互いを横目で見ながら、生産調整をしていると考えられる。簡単に言えば、一種の談合である(ただし密室談合ではない)。このようなことから、DRAMは年間150億個しか出荷されない状態になっているわけだ(注:ところが2019年は価格が低迷したままなのに過去最高の約170億個が出荷された。この理由は、今のところ不明である)。

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