CASE時代のクルマ産業、ボトルネックになり得る半導体は何か:湯之上隆のナノフォーカス(22)(4/4 ページ)
CASE(Connected、Autonomous、Shared & Services、Electric)の波が押し寄せている自動車産業。それに伴い、1台当たりのクルマに搭載される半導体の量も増加の一途をたどっている。では、そんなCASE時代の自動車産業において、“ボトルネック”となり得る半導体とは何か。
先端DRAMがボトルネックになる時代
2018年のお正月を過ぎた頃、本格的なビッグデータ時代を迎え、データセンターを競って建設していたAmazon、Microsoft、GoogleなどがSamsung詣でをしているというニュースが報道された(2018年1月8日の日経新聞)。これは、データセンター用のサーバに使う先端DRAMを確保するための行動だった。
この結果、Googleは、Samsungが持つ月産約45万枚のDRAMラインのうち、2万枚分をウエハーごと買い取る契約を結ぶことになった。つまり、SamsungのDRAM工場のうち、月産2万枚分はGoogle専用ラインになったのだ。前代未聞の出来事である。
しかし筆者は、「レベル4〜5」の自動運転車が本格的に普及する時代には、これと同じような現象が起きると想像している。
クルマメーカーは自力で、AI半導体も、通信半導体も、メモリも製造できない。従って、先端AI半導体や通信半導体をTSMCに製造委託する必要がある。これに加えて、SamsungやMicronなどのメモリメーカーに「先端DRAMを売ってください」と頭を下げる事態になるのではないか?
1年で24億個のGDDR6が必要となると、12インチウエハー1枚で1000個のDRAMできると仮定して1年240万枚、月産で20万枚のDRAMが必要になる。
これは、DRAMメーカーの世界全体のキャパシティー約130万枚の15%に相当する。しかも、規格が特殊なGDDR6である上に、車載半導体になるため過酷条件に耐えうる超高信頼性が要求される。そのため、GoogleがSamsungから毎月2万枚を購入したことより、もっと大騒ぎになることが予想される。
最後に結論を述べよう。「レベル4〜5」の自動運転車が本格的に普及する時代には、先端DRAMの確保がボトルネックになる!
クルマメーカーの皆さん、覚悟はいいですか? 「ようこそ、シリコンサイクルの世界へ!」
筆者プロフィール
湯之上隆(ゆのがみ たかし)微細加工研究所 所長
1961年生まれ。静岡県出身。京都大学大学院(原子核工学専攻)を修了後、日立製作所入社。以降16年に渡り、中央研究所、半導体事業部、エルピーダメモリ(出向)、半導体先端テクノロジーズ(出向)にて半導体の微細加工技術開発に従事。2000年に京都大学より工学博士取得。現在、微細加工研究所の所長として、半導体・電機産業関係企業のコンサルタントおよびジャーナリストの仕事に従事。著書に『日本「半導体」敗戦』(光文社)、『「電機・半導体」大崩壊の教訓』(日本文芸社)、『日本型モノづくりの敗北 零戦・半導体・テレビ』(文春新書)。
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