中国の技術メーカー700社がマスク生産へ:無いなら作る(2/2 ページ)
産業/商業登記の変更調査を手掛けるTianyan Inspectionによると、2020年1月1日〜2月7日の期間中に、約3000社の中国メーカー(うち700社が技術メーカー)が、自社の製造ラインにマスクや防護服、消毒液、体温計、医療機器などを追加したという。
マスク生産に踏み切る中国テック企業
FoxconnやBYD、マスク生産事業に参入
約700社の技術メーカーのうち、どのメーカーが、産業/商業登録を変更してマスクの生産を開始したのだろうか。マスク生産を開始した技術メーカーとして、まずFoxconnとBYDについて見ていきたい。
Foxconnは、「地方政府の防止対策ガイドラインに迅速に対応するためには、マスクが必要だ」と述べる。
同社は、「2020年2月末までには、1日当たり200万枚のマスクを生産できるようになる。生産したマスクについては、当社の約100万人の従業員用として備蓄する予定だ」と述べている。
しかし将来的には、マスクの輸出も検討しているという。
一方、中国の大手自動車メーカーBYDは、危機的状況に対応すべく、保護具の開発と製造に着手し、マスクや消毒液の生産にも対応している。
同社は2020年2月17日ごろに、マスクや消毒液の出荷を開始する予定だという。感染拡大が収束するまで、1日当たり500万枚のマスクを生産できる見込みのようだ。
OPPOとVivoは、マスク製造に向け従業員を調整中
中国の大手スマートフォンメーカーであるOPPOとVivoは、マスク製造に向けて従業員の調整をしているという。OPPOは、マスク製造の関連企業に、技術者と労働者を派遣したと述べた。
Sinopec:材料はあるが製造機がない
現地メディアの報道によると、中国最大の国営石油会社であるSinopec(China Petroleum and Chemical Corporation:中国石油化工集団有限公司)は、同社のメルトブロー不織布を使用することが可能なマスク製造機を、急いで探しているところだという。
同社の関係者によると、Sinopecは2020年2月中に生産体制を強化し、約10万トンの原材料を生産する計画だという。同社は、マスクや注射器などのポリプロピレン化学製品に必要な原材料の生産計画を調整している。
Changying Precision:まず1000万枚のマスクを用意
携帯電話機の生産を手掛けるChangying Precisionは2020年2月9日、「当社のオートメーション設備を、政府に割り当てられた緊急課題の実施、すなわち耳掛け式フラットマスクの生産に充てる」と述べた。試用生産が成功すれば、マスク1000万枚分の材料を使って最初の生産を行うという。さらに、2月末までに1日当たりの生産能力を100万枚に高める計画だとしている。
Changying Precisionは、1日に500万枚を生産できる別の施設も準備中だという。
SAIC-GM-Wuling:1日当たり170万枚のマスクを生産
SAIC-GM-Wuling Automobileは2020年2月6日に中国のメッセージアプリ「WeChat」で、「現在の生産ラインをマスク生産に転換する」と発表した。
SAIC-GM-Wuling Automobileは、General MotorsとSAIC Motor、SAIC-GM-Wuling Automobileの合弁会社で、「Baojun」ブランドの乗用車の製造・販売を手掛けている。
Guangxi Construction Engineering Groupが改造したダストフリーの工場を2020年2月中に使用できる見通しだという。高品質のN95マスク生産向けを4ライン、一般医療用保護マスク生産向けを10ライン、計14のマスク生産ラインを設置する。1日当たりの生産量は170万枚以上の見込みで、広西チワン族自治区の医療品不足の緩和に向ける。
GAC Group:マスク生産ラインの構築についてリサーチ
GAC Groupは2020年2月8日、マスク生産ライン装置を製造する計画について検討していると発表した。同社は広東省広州に本社を置く中国の自動車メーカーで、Guangzhou Automobile Industry Groupの子会社である。
GAC Groupの作業は、GAC Groupの部品事業本部に引き渡される。同社は、「この計画によって、当社の主要事業である自動車製造に影響が及ぶことはない」と述べている。
リチウム電池メーカーのYinghe Technology、マスク生産ラインを開発
Yinghe Technologyは、医療用マスクを製造する全自動統合マシンを開発・製造したと発表した。同社は、KN95マスク(M95)の自動生産ラインを共同開発するためにZhende Medicalと協定を結んだという。Yinghe Technologyは、できるだけ早く深セン市政府に100セットの設備を供給することに合意している。
深センのあるスマートフォンメーカーは先日、マスク製造工場の監督者募集の雇用案内を掲載した。
上記に挙げた他にも、多数のエレクトロニクス系テック企業(もちろん、マスク製造に携わったことはない)が、「マスク製造に詳しい人材が必要だ」と表明している。
【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
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