極薄透明フィルムへのチェンジング印刷を可能に:微細線と高精度位置合わせ技術で
凸版印刷は、微細な配線技術と高精度の位置合わせ技術を用い、極めて薄い透明フィルムへのチェンジング印刷が可能な技術を確立した。
4色のカラーインキを用い、両面に高い位置合わせ精度で印刷
凸版印刷は2020年2月、微細な配線技術と高精度の位置合わせ技術を用い、極めて薄い透明フィルムへのチェンジング印刷が可能な技術を確立したと発表した。
チェンジング印刷は、見る角度によって印刷物の色や絵柄が変化する技術である。このため、偽造防止や真贋判定といったセキュリティ分野などで注目されている。また、導電性インキを用いて微細な配線パターンを印刷する技術は、エレクトロニクス分野での応用が期待されている。
凸版印刷はこれまで、グラビアオフセット印刷方式を用いて、線幅(ライン)とその間隔(スペース)がそれぞれ10μmの微細なパターンを、600×600mmの基板サイズに形成する印刷技術を確立してきた。また、線幅と間隔を適切に制御することで単色の階調表現を可能にしたり、カラー化したりすることにも成功していた。
今回は、線幅と間隔を10μmで印刷する技術と、基材の両面に高い位置合わせ精度で細線を印刷する技術を融合した。これにより、極めて薄い透明フィルムへのチェンジング印刷を可能とした。
従来のチェンジング印刷は、印刷する線幅に合わせた厚みの基材を用いたり、レンチキュラーレンズを組み合わせることで光路の長さを変えたりしていた。新たに開発した技術は、色の重なり方の違いによって視野の変化を作り出すため、これらの対応が要らないという。
今回作製したチェンジング印刷は、厚みが50μmと極めて薄い透明フィルムを用いた。この基材の両面に、シアン、マゼンタ、グリーン、ブラックと4色のインキを使って細線を印刷した。一例だが、表側に線幅20μmで、シアンとマゼンタ、グリーンを印刷した。裏側には表側のシアンおよび、マゼンタと重なる部分にのみブラックを高精度に位置合わせして印刷した。
これを表側から見ると、見る位置によって認識できる色が異なるという。「正面」からは裏側のブラックと重なった部分の色(シアンとマゼンタ)は認識できず、グリーンのみ見える。「右斜め」あるいは「左斜め」から見ると、ブラックと重なっていないマゼンタもしくはシアンのみが見える。
凸版印刷は、開発した技術を導電性材料と融合すれば、意匠性を持たせたエレクトロニクス製品などにも応用できるとみている。
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