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インタビュー

産業向けを“第2の屋台骨”に、完全な製品群を目指すルネサス IoT・インフラ事業本部長 Sailesh Chittipeddi氏(3/3 ページ)

ルネサス エレクトロニクスでは、全社売上高に占めるIoT・インフラ事業本部の売上高比率を、現行の48%から50%に高め、自動車向け事業と同規模にすると発表している。IoT・インフラ事業本部長を務めるSailesh Chittipeddi(サイレシュ・チッティペディ)氏に、その戦略などを尋ねた。

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Armマイコンに本腰

――ルネサスは2019年10月にArm「Cortex-M」ベースの32ビットマイコン「RAファミリー」を発表しました。Armマイコン市場に本格的に参入したわけですが、この分野ではSTMicroelectronicsなどの競合が既にある程度のポジションを築いています。競合に対する強みと差異化要因について教えてください。


「RAファミリー」の展開 出典:ルネサス(クリックで拡大)

Chittipeddi氏 32ビットのArmマイコン市場は成長し始めたばかりだ。そのため、1社(STMicroelectronics)だけでなく幾つものプレーヤーが参入し競争できるスペースがある。

 RAファミリーの強みの一つは「FSP(Flexible Software Package)」だ。FSPはさまざまなユースケースを想定し、オープンアーキテクチャを採用している。これによりFreeRTOSを使えるだけでなく、過去のソフト資産を活用したりパートナー製のソリューションとの併用が可能になったりといった柔軟性を提供できる。

 Armベースのシステムでは、エコシステムのパートナーシップが非常に重要だ。ルネサスは2019年10月に、Microsoftとパートナーシップを締結し、当社のマイコンがMicrosoft Azure RTOSをサポートしていくと発表した。FSPもAzure RTOSに対応する予定だ。他にも幾つかのパートナーシップを発表していく予定だ。より幅広い分野に参入し、ルネサスの製品を浸透させていくためには、パートナーシップの構築が欠かせない。

 もう一つの強みはセキュリティだ。競合の製品が対応しているソフトウェアは基本的にArmのコミュニティーで開発されたものが多く、セキュリティの面では懸念が残る。われわれは、セキュリティを担保したソフトウェアを提供する。そこが、競合他社とは大きく異なる点だ。

 現時点では競合他社の幾つかが当社よりも先行しているが、2021年には完全なポートフォリオを実現し、Armマイコン市場でもリーダー的ポジションを構築することを目指していく。独自コアを搭載した32ビットマイコンの世界では、ルネサスが首位を維持していることを忘れないでほしい。Armマイコンでもリーダーシップを取れると確信している。

――2019年10月に、エナジーハーベスト(環境発電)用の組み込みコントローラーを「REファミリー」として新たに発表し、第1弾製品の量産を開始しました。ただ、このエナジーハーベストは、きちんと利益を出せるほど大きな市場なのでしょうか。

Chittipeddi氏 エナジーハーベストのように、“電池を全く使わない”機器の市場は、まだかなり初期段階にある。市場の成長スピードは、われわれが思っていた以上に遅い。“完全なるエナジーハーベスト”の機器については、コスト構造がまだ曖昧で、“バッテリーを変えずに済むこと”と価格との折り合いがついていない。技術ではなくコストの問題が、市場の成長スピードを遅くしている要因の一つになっている。

 ルネサスとしては、REファミリーとRF技術を組み合わせたソリューションを、2020年後半にも発表する予定だ。それが、(REファミリーのビジネスが伸びる)きっかけになるとは思うが、とにかく“完全なるエナジーハーベスト”の市場の成長は時間がかかると理解している。同市場向けのビジネスについては、数年前に目標としていたアグレッシブな予測ではなく、より現実的な事業予測を立てて、遂行しようとしている。

――現状、新型コロナウイルスによる事業への影響は、どのように見ていますか。

Chittipeddi氏 影響があることは確かだが、どの程度影響があるかを予測するには、現時点では時期尚早だ。ただ、四半期レベルでは売上高の変化に波はあっても、2020年通年ではそれほど大きな影響はないのではないかと見ている。

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