ルネサスが中期戦略を発表「市場平均成長上回る」:頑張れば手が届く目標設定
ルネサス エレクトロニクスは2020年2月17日、アナリスト/報道機関向けに中長期戦略に関する説明会を開催し、今後5年程度にわたり市場平均を上回る売上高成長を実現し、売上総利益率50%、営業利益率20%以上の達成を目指すとした。
ルネサス エレクトロニクスは2020年2月17日、アナリスト/報道機関向けに中長期戦略に関する説明会を開催し、今後5年程度にわたり市場平均を上回る売上高成長を実現し、売上総利益率50%、営業利益率20%以上の達成を目指すとした。
説明会ではまず、社長兼CEO(最高経営責任者)の柴田英利氏が、2017年のIntersil(インターシル)買収、2019年のIntegrated Device Technology(IDT)買収という2つのM&Aを通じ、企業体質が大きく変わったことを強調。Intersil/IDTが得意にするアナログ、ミックスドシグナルが大幅に拡充され、それまで高かったマイコン/SoC(System on Chip)の売上構成比が50%にまで低下。「製品ポートフォリオが改善され、製品の多様化が進んだ」(柴田氏)とした。また、M&Aを通じて、サーバーや携帯電話基地局などのインフラ向け事業が大きく強化された点なども強調した。
M&Aを通じて、製品構成、事業構成の改善を進めてきたものの、売上高については、伸び悩んでいる。2016年に4〜5年先の中期目標として、「市場平均の2倍の売上高成長」「売上総利益率50%」などの数値目標を掲げた。ただ2019年12月期末時点で、売上高は、7%成長にとどまり、市場平均とほぼ同じ成長に終わっている。売上総利益率についても2019年12月期は44%で、中期目標は未達に終わっている。
こうした中期目標未達は、前工程工場への過剰投資などとともに、市場平均の2倍を目指した売上高成長が伸び悩んだことが主因。売上高成長を思うように実現できなかったことについて柴田氏は「新製品展開が独り善がりだった」と、製品開発面で課題があったことを率直に認めた。
発表した新しい中長期戦略では、売上高に関する目標は「(年平均成長率7%を見込む)市場平均成長率を上回る成長」と従来目標から下方修正。柴田氏は「頑張れば手が届く目標設定にした。せっかく目標を掲げるので達成したい」と述べ、達成可能な現実的な目標に改めたとした。
注力する事業については、従来と変わらず、自動車向け事業と、産業/インフラ/IoT向け事業の2事業を設定。いずれもM&Aで強化された製品群を生かし、複数のデバイスを同時に提案する“ソリューション提案”で、売り上げ成長を図る方針。
自動車向け事業では、特にADAS(先進運転支援システム)向けと電気自動車などxEV向けビジネスを強化する方針。一方で、車載情報機器向けについては「ADAS、xEVを伸ばすために、そんなに成長を追わない」(柴田氏)。自動車向け事業では、2019年から2023年までの年平均成長率8%程度と見込む市場平均成長率とほぼ同程度の売上成長を目指す。
産業/インフラ/IoT向け事業は、自動車向け事業に比べてアナログ/ミックスドシグナル製品の比率が高く、マイコン/SoCを組み合わせたソリューション提案が先行。今後もそうしたソリューション提案を強化することで、年平均7%程度(2019〜2023年)と見る市場平均成長率を上回る売上げ成長を目指す方針。その結果、現状全社売上高に占める産業/インフラ/IoT向け事業売上高比率を48%から50%に高め、自動車向け事業と同規模にする。
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