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画素形状を1/1000以下にする超解像現象を発見X線領域で数十nmの解像度

東北大学と埼玉医科大学、宇都宮大学の研究グループは、シンチレーターと誘導放出抑制(STED)技術を組み合わせることで、X線撮像素子のピクセルサイズを従来の1000分の1以下に縮小できる超解像現象を発見した。

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シンチレーターと誘導放出抑制技術を組み合わせ

 東北大学多元物質科学研究所の江島丈雄准教授と埼玉医科大学保健医療学部の若山俊隆教授および、宇都宮大学工学部の東口武史教授らによる研究グループは2020年3月、シンチレーターと誘導放出抑制(STED)技術を組み合わせることで、X線撮像素子のピクセルサイズを従来の1000分の1以下に縮小できる超解像現象を発見したと発表した。

 より詳細なX線顕微鏡像を得るためには、撮像素子のピクセルサイズを小さくする必要がある。現行の背面照射型CCDあるいは背面照射型CMOSを用いた撮像素子のピクセルサイズは約10×10μm2である。

 撮像素子のピクセルサイズをさらに小さくする方法の1つとして、シンチレーターで軟X線を可視光に変換し、それを顕微鏡で拡大して像を得る方法がこれまで試されてきた。この時に得られるピクセルサイズは「アッベの回折限界」と呼ばれる式で求めることができる。さらに、誘導放出抑制(STED)現象を活用して、蛍光体における蛍光領域を制限することにより、アッベの回折限界を超えた空間分解能を得ることができるという。

 研究グループは今回、光子エネルギー2.58eV(波長480nm)から1.97eV(波長630nm)のベクトル光を用いて、紫外光で励起したシンチレーターの1つである「Ce:LSO」の蛍光が誘導放出抑制されるかどうかを検証した。この結果、この波長域で誘導放出が抑制されることを確認した。

 さらに、励起光を光子エネルギー800eV(波長1.55nm)の軟X線に変えて照射した場合でも、同じように可視ベクトル光によりシンチレーターの発光領域が制限されることが分かった。照射領域の大きさと発光領域の大きさの比であるスポット径比δdSTED/δdNは、紫外線励起の場合と同じく、光強度比ISTED/Isatの値が大きくなるにつれて減少した。スポット径比の実験結果は、修正されたアッベの回折限界の式で説明できるという。


左は軟X線(800eV)で励起したCe:LSOの発光(青色)とSTEDレーザー(緑色)、中央は破線AB間での光強度プロファイル、右は発光点径/ビーム径比の光強度比変化 (クリックで拡大) 出典:東北大学他

 これらの結果から、X線領域の光を数十nmの高い解像度で検出できることが分かった。今回の成果について研究グループは、「Ce:LSOがX線励起による蛍光においてSTED現象を示すこと」と「ベクトル偏光をした光を用いるとその蛍光領域を制限できること」を確認した。この結果は、「対物レンズの空間分解能よりも小さな蛍光点径が得られる」ことや、「高い解像度を持つ2次元検出器やレントゲン方式の顕微鏡として応用が可能である」ことを示しているという。

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