自動運転を支えるMEMSセンサーとその応用:福田昭のデバイス通信(239) 2019年度版実装技術ロードマップ(49)(2/2 ページ)
今回は、自動運転を支えるMEMSセンサーと、その応用について解説する。
全地球測位と慣性測定で車両の位置を高い精度で把握
車両の現在位置をリアルタイムで検出する手段としては、全地球測位衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)がよく知られている。GNSSは複数の人工衛星が発信する電波を車両が受信することで、車両の現在位置を推定する。ただし、GNSSユニットの搭載だけでは、自動運転システムは構築できない。建物や街路樹の近傍、地下道などでは人工衛星の電波を受信できないことがあるからだ。
この弱点を補うため、高度な自動運転システムではGNSSユニットのほかに、慣性測定ユニット(IMU:Inertial Measurement Unit)を搭載する。慣性測定ユニットは車両の角速度と加速度を検出するユニットである。GNSSの信号を受信できないときはIMUの測定データを利用して車両の位置を把握する。またIMUの測定データとGNSSユニットの信号を組み合わせることで、車両の位置を高い精度で推定できるようになる。なおGNSSとIMUを組み合わせる測位技術を「デッドレコニング(Dead Reckoning)」あるいは「自立航法(自律航法)」と呼ぶ。
慣性測定ユニット(IMU)は、3軸の角速度センサー(「ジャイロセンサー」とも呼ぶ)と3軸の加速度センサーを内蔵する。この中で位置推定に特に大きな影響を与えるのは、MEMS技術によるヨーレートセンサー(左右方向への回転角速度を測定するセンサー)である。回転角速度を積分することで車両の回転角、すなわち走行方向をリアルタイムで検出する。検出した走行方向のわずかな誤差が、高速走行時は短時間で位置推定の大きな誤差となりかねない。
(次回に続く)
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