日本中小企業のAI導入加速を狙う、ジルファルコン:シリコンバレー発AIスタートアップ(3/3 ページ)
IoT(モノのインターネット)市場の拡大などによってエッジAI(人工知能)へのニーズが急速に高まる中、独自の用途特化型アーキテクチャ(Domain Specific Archtechrure:DSA)を武器としたスタートアップ企業が勢いを増している――。今回、AIアクセラレーターを手掛ける米国シリコンバレー発スタートアップGyrfalcon Technology(以下、Gyrfalcon)の日本法人代表に、同社の技術や日本市場での狙いなどを聞いた。
日本の中小製造業の現場にもAIを
――日本市場への展開を積極的に進めているが、その狙いは?
西口氏 私は、Gyrfalconから取締役のオファーを受けた際にその技術をデモを交えて見せてもらい、この技術は、今後必ずマーケットが必要とし、広く活用されるものになると確信した。日本企業は現在、残念ながらAIに関する開発競争のなかで後れを取っている。私は、Gyrfalconのデバイスを活用することによって日本企業にAI機能を搭載した製品開発を加速してもらいたいという思いを持ち、本社と議論を重ね日本法人の設立を実現させた。
正直に言えば、本社が狙っているようなスマートフォンなどのボリュームの多い民生市場で、日本のエレクトロニクス企業が大量にAIデバイスを導入する、ということはなかなか見込めないだろうと考えている。その一方で産業用途に関しては、日本企業が国内外へ打って出ていくだろうとみており、この市場の見込み客に対して積極的に攻めていく方針だ。実際に産業用途では、既に日本の十数社が導入の検討を進めており、デバイスの評価をしてもらっている。
――現在の具体的な取り組みについて。
西口氏 日本市場では、まず国内メーカーが多いドライブレコーダーなどに向け、企業への技術支援やAIモデルの受託開発などにも対応していきながらAIチップを展開していく方針で、既にValue Added Resseler(VAR/付加価値再販業者)として丸紅情報システムズ、伯東の2社とも契約している。COVID-19によって出展予定だった2020年4月の「AI・人工知能EXPO」が中止となったほか、立ち上げたばかりの東京事業所に来訪してもらうことが難しくなるなど影響もあったが、この2社の持つチャンネルを生かすことで、着実にアプローチを進めることができている。
こうした拡販と同時に日本で特に注力していきたいのが、製造業の中小企業におけるAI活用の促進だ。製造業の現場では、ほとんどの製品で外観検査が必要となるが、この作業は従来、担当者が目視で行っている。特に中小企業においてこのままの状況が続けば現場に必ず限界が来るだろう。こうした場面で、われわれの「AIサーバ」が使われるように積極的に展開していきたいと考えている。
ただし、SI(システムインテグレーター)に依頼すれば多額のコストがかかるなど、中小企業にとって「AIの導入」は簡単なことではない。そこで、中小企業の生産技術や製造技術担当者の社員に、われわれのAIについて学んでもらい必要最低限のAI活用ができる能力を持ってもらるような仕組みを作っていきたいと思っている。
既に日本のデータサイエンティストとともに、こうしたAI活用能力を持つ「AIデザイナー」の研修システムも作り上げた。こうした取り組みによって中小企業の現場などにまでAI導入を広げ、日本社会の変革に繋げたいと考えている。これは同時に、われわれのデバイスに対するニーズを生むことになるだろう。
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