戦いの火ぶたが切られたエッジAI市場:スタートアップの勢いにも期待
人工知能(AI)は過去2年間で、世界的なメガトレンドへと変化した。機械学習は、消費者や自動車、産業、エレクトロニクス全般など、ほぼ全てに何らかの形で影響をもたらしている。さらに、私たちがまだ、うかがい知れない方法で社会や生活に影響を与えると思われる。
人工知能(AI)は過去2年間で、世界的なメガトレンドへと変化した。機械学習は、消費者や自動車、産業、エレクトロニクス全般など、ほぼ全てに何らかの形で影響をもたらしている。さらに、私たちがまだ、うかがい知れない方法で社会や生活に影響を与えると思われる。
これが業界に対して意味しているのは、ほぼ全てのプロセッサベンダーが、機械学習を「金の卵を産むガチョウ」と考えているということだ。業界では、データセンター以外の機械学習やエッジAIなど、最も将来性のある分野における特定のワークロードの高速化に適切なソリューションとして、独自のアプローチを売り込む競争が始まっている。
エッジAIは、自動運転車から音声コマンドに応答するコーヒーメーカーまで、幅広い電子機器に適用できるため、大いに将来性が期待できる。レイテンシ(待機時間)やデータプライバシー、低消費電力、低コストを組み合わせる必要のあるアプリケーションは、最終的にエッジAI推論に移行することも増えていくだろう(米国の市場調査会社Gartnerのグラフによると、"エッジAI"は5年以内に実用化が期待される唯一のAI技術だという)
推論のワークロードは特殊だ。大量の低精度データの大規模な並列処理が必要で、メモリへのアクセスがボトルネックになる。全てではないが、推論に使われるほとんどの種類のプロセッサは、これらの要件に合うよう改良されている。
現在は独占状態だが……
現行の技術ではGPUで対応しているが、現時点では事実上、NVIDIAの1社が独占している状態だ。幸運にも、コンピュータグラフィックスの高速化のために開発されたGPUのSIMD(Single-Instruction Multiple-Data)アーキテクチャが、AIワークロードに適していることが分かった。NVIDIAは、データセンターと自動運転向けAIスーパーコンピュータ、さらにエッジデバイス向けの小型バージョンを開発して、できる限りこの波に乗りたい考えだ。
NVIDIA以外にもあらゆる企業がこの市場への参入を目指している。FPGAは長らく数学的アルゴリズムの高速化に使用されてきたが、ベンダーはエッジAI処理に合わせて製品を改良している。Xilinxは、ドメイン固有のアーキテクチャの概念を進化させ、プログラマブルロジックを他のコンピューティングタイプと組み合わせて、データフローを新しいワークロードに合わせてカスタマイズできるようにしている。一方、Lattice Semiconductorは、低電力デバイスの画像処理に狙いを定めている。
スタートアップ企業の勢いが強い
この他にも、数々のスタートアップ企業が、次なる目玉技術として革新的アーキテクチャを発表している。それらは、例えばMythicやSyntiant、Gyrfalcon TechnologyのPIM(Processor In Memory)技術やHailoのプロセッサニアメモリ、Flex Logix Technologiesのプログラマブルロジック、Esperanto TechnologiesやGraphcoreのRISC-Vコア、さらにEta Computeの超小型SoC(System on Chip)から、CerebrasやGraphcoreのハイパースケールデータセンター向けチップまで多岐にわたる。
こうした新たなアクセラレーターチップセットが出始めた組み込み業界の開発者たちは、“それらをどう使用すればよいのか”というのを、学ばなければならないだろう。ソフトウェアが大きな鍵となる。より“伝統的”な、従来のCPUやMPU(Micro Processor Unit)、MCU(Micro Controller Unit)が、ここでは有利になるだろう。
新しいソフトウェアプラットフォームにおいて、開発者のコミュニティーを形成するのは容易ではない。NVIDIAは、約10年をかけて、同社のGPUソフトウェアプラットフォーム「CUDA」を成功させた。エッジAIの分野に参入する企業は、ライブラリやツールキットの構築とともに、カンファレンスやフォーラムを開いて開発者たちにトレーニングの場を提供する必要がある。ただ、スタートアップ企業だと、こうしたことに割くリソースが限られてしまうことも少なくない。
エッジAI市場の競争は、まだ始まったばかりだ。ソフトウェアスタックの開発や、開発者への教育、柔軟なニューラルネットワークの実現などに適切な投資をできた企業が、勝者となるだろう。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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