キヤノン、100万画素SPADイメージセンサーを開発:3Dカメラなどへの応用を提案
キヤノンは、100万画素の撮像を可能にしたSPADイメージセンサーを開発した。奥行き情報が必要な3Dカメラなどへの応用を提案していく。
フォトンカウンティングで光量とその時間分布を高精度に検出
キヤノンは2020年6月、100万画素の撮像を可能にしたSPAD(Single Photon Avalanche Diode)イメージセンサーを開発したと発表した。奥行き情報が必要な3Dカメラなどへの応用を提案していく。
SPADイメージセンサーは、光子(フォトン)が入射すると、増倍作用で大きな電気パルス信号を出力する素子(ダイオード)を、画素ごとに並べたセンサーである。光子1個から多くの電子に増倍させることができるため、撮像時の感度や測距時の精度を高めることが可能だという。半面、画素ごとにメモリまたはカウンターが必要であったり、耐圧構造が求められたりするため、画素サイズが大きくなって多画素化は難しいといわれてきた。
キヤノンは今回、新たな回路技術を採用し、SPADセンサーでは初めてとなる、100万画素のデジタル画像出力を実現したという。具体的には、光信号を離散的なデジタル信号として検出する「フォトンカウンティング方式」を用いた。これによって、電気的なノイズの影響を排除し、微弱な信号も高精度に検出できるという。また、光量に加え、光子が検出された時刻も正確に測定することを可能にした。
グローバルシャッター機能も搭載した。全ての画素に対し露光を一括制御することができる。露光時間は3.8ナノ秒まで設定することが可能で、ゆがみのない形状で撮像をすることができる。さらに、1ビット出力で最大2万4000フレーム/秒の高速撮影に対応する。
時間分解能は100ピコ秒である。この特性を生かすことで、ToF(Time of Flight)方式による距離測定が可能となる。高解像度で高速撮影に対応できることから、複数の被測定物が折り重なっているような状況でも、高い精度で3D測距が可能となった。自動運転での車間距離測定などにも活用することができるという。
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