積層型イベントベースビジョンセンサーを開発:ソニーとPropheseeが共同で
ソニーとProphesee(プロフェシー)は、積層型イベントベースビジョンセンサーを共同開発した。画素サイズが4.86×4.86μmと極めて小さく、ダイナミックレンジは124dBを上回る。
画素サイズ4.86×4.86μm、ダイナミックレンジ124dB以上
ソニーとProphesee(プロフェシー)は2020年2月、積層型イベントベースビジョンセンサーを共同開発したと発表した。画素サイズが4.86×4.86μmと極めて小さく、ダイナミックレンジは124dBを上回るという。
積層型イベントベースビジョンセンサーは、画素ごとに輝度変化を非同期で検出し、変化したデータだけ、座標と時間の情報と組み合わせて出力する。これによって効率よく、高速かつ低遅延でデータの出力が可能となる。
開発したビジョンセンサーは、ソニーの積層型CMOSイメージセンサー技術と、プロフェシーが保有するMetavision(メタビジョン)の高時間分解能や高出力のデータ読み出しなど、イベントベース方式のビジョンセンシング技術を組み合わせた。これにより、「低消費電力」で「小型」「高解像度」「高速・高時間分解能」を実現した。
特に、ソニーの積層型CMOSイメージセンサーは、画素サイズが4.86×4.86μmの「画素チップ」と、非同期デルタ変調方式を用いた輝度変化を検出する信号処理回路を組み込み、40nmプロセスで製造した「ロジックチップ」を個別に用意し、これらを上下に積層した。チップ間は画素ごとにCu(銅)のパッド同士をつなぐCu-Cu接続を行い導通している。この接続技術により、一般的に用いられるTSV(シリコン貫通電極)方式と比べ、設計の自由度や生産性が向上し、小型・高性能化も可能だという。
開発したビジョンセンサーは、イメージサイズが1/2型で1280×720画素の解像度を実現した。画素チップは、裏面照射型画素と一部のn型MOSトランジスタのみを搭載することで開口率77%を達成。124dB以上という極めて高いダイナミックレンジを実現した。このため、40mlxという低照度でもイベント検出が可能だという。
高時間分解能でイベントデータの読み出しも実現した。従来のフレームベース方式だと、フレームレートに応じて画像を出力する。これに対しイベントベース方式は、行方向調停回路を用い非同期で画素データを選択。輝度変化が生じた画素アドレスに対し、1マイクロ秒単位の精度で時間情報を付加し、データを読み出すことが可能である。イベントごとに輝度変化の両極性や時間、座標のデータ(x/y)を効率的に圧縮することで、毎秒1066Mイベントの出力を達成したという。
関連記事
- 2019年Q3の半導体売上高ランキング、ソニーが9位に
2019年第3四半期の世界半導体売上高は、メモリ市場は成長の兆しを見せているが、引き続き下落傾向にある。今回の売上高ランキングでは、Intelが引き続き第1を維持した他、ソニーセミコンダクタソリューションズが、今回初めてトップ10入りを果たすという偉業を成し遂げた。 - 「5G本格化、2020年はさらに多忙に」ソニー、清水氏
ソニーセミコンダクタソリューションズ社長の清水照士氏が2019年12月11日、「SEMICON Japan 2019」(2019年12月11〜13日、東京ビッグサイト)で開催された「半導体エグゼクティブフォーラム」に登壇。2020年の半導体市場の見通しについて、「5Gをベースとした半導体がものすごく忙しくなると思う。われわれも2019年より相当忙しくなるだろう」と述べた。 - 「世界初」の独自構造偏光イメージセンサー、ソニー
ソニーセミコンダクタソリューションズは、「SEMICON Japan2019」(2019年12月11〜13日、東京ビッグサイト)で、4方向の偏光子を半導体プロセス上で形成した独自構造の偏光イメージセンサーを展示した。同社は、この構造を実現したのは世界初としている。ブースでは、通常は見えないクルマの傷やレンズのゆがみなどをはっきりと映し出すデモンストレーションが行われた。 - ソニー、イメージセンサー絶好調で長崎に新工場建設
ソニーは2019年10月30日、本社(東京都港区)で行った2019年3月期(2019年度)第2四半期(7〜9月)の連結業績発表で、長崎の拠点にイメージセンサーの製造棟を新設することが決定した、と明かした。2019年12月着工、2021年4月の量産開始を予定している。 - ソニー、監視用途向け4K解像度イメージセンサー
ソニーは、4K解像度のCMOSイメージセンサーとして、セキュリティカメラに向けた2製品を発表した。 - 医療、ライフサイエンスで発揮するソニーの技術力
ソニーは「CEATEC 2019」(2019年10月15〜18日、幕張メッセ)で、メディカルイメージング領域とライフサイエンス領域に関する技術や製品を初めて展示した。同社がCEATECに出展するのは2013年以来6年ぶりだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.