125℃で連続使用可能な新フィルムコンデンサー技術:PCIM Europe digital days 2020、TDK
TDKは、オンライン開催となったパワーエレクトロニクス展示会「PCIM Europe digital days 2020」(2020年7月7〜8日、ドイツ時間)に出展。125℃の高温でも連続使用できる新たなフィルムコンデンサー技術について紹介した。同社は、「新たな誘電体によって高温での小型化や高耐電圧化および、動作温度や許容電流負荷の増加を可能とする」と説明。次世代パワー半導体であるSiC(炭化ケイ素)などを用いた、高温や大電流負荷への対応が必要となるアプリケーション向けの新製品を2021年に量産開始する予定としている。
TDKは、オンライン開催となったパワーエレクトロニクス展示会「PCIM Europe digital days 2020」(2020年7月7〜8日、ドイツ時間)に出展。125℃の高温でも連続使用できる新たなフィルムコンデンサー技術について紹介した。同社は、「新たな誘電体によって高温での小型化や高耐電圧化および、動作温度や許容電流負荷の増加を可能とする」と説明。次世代パワー半導体であるSiC(炭化ケイ素)などを用いた、高温や大電流負荷への対応が必要となるアプリケーション向けの新製品を2021年に量産開始する予定としている。
「COC」を用いた新たな誘導体で実現
同社が紹介したのは、非結晶環状オレフィンコポリマー(COC)を用いた新しい誘電体を採用したフィルムコンデンサーだ。
同社は優れた耐熱性を持つCOCと、「フィルムでの処理に理想的」とする半結晶ポリプロピレンを組み合わせた新たな誘電体(COC-PP)を開発。従来の二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)誘電体を用いたフィルムコンデンサーの上限動作温度が105℃なのに対し、COC-PPはディレーティングが非常に低く、125℃を超える温度で連続使用が可能となっている。同時に、BOPPの持つ優れた自己修復特性も維持。また、3μmの超薄型フィルムも生産可能という。
同社は、「この新誘電体の採用によって、コンデンサーの開発の方向性に自由度が生まれた」と説明。例えば定格電圧840VDC、定格温度85℃、静電容量20μFの既存製品を105℃で動作させる場合と比較すると、この新誘電体を採用したコンデンサーは30%の小型化ができるほか、同サイズを維持するのであれば30%の高耐電圧化が可能としている。
同社は2019年11月に、同技術に関する記事を自社HP内に掲載。記事内ではこの技術を用いた製品として、125℃で電圧ディレーティングなしに作動する、定格電圧700〜2200VDC、静電容量370μ〜2300µFで、電車、産業用モータドライブ、再生エネルギーアプリケーションなど大電力用途のコンデンサーについて言及していた。
今回、新たに紹介したのはプリント基板実装用の小型タイプだ。詳細は明かしていないが動作温度は125℃で、定格電圧は520〜720VDC、静電容量は20μ〜60μF、リード線間隔は37.5mmおよび52.5mmのDCリンク用製品として紹介。同社の説明担当者は、「SiCのような新世代の半導体との組み合わせなど、超高温や大電流負荷を必要とするあらゆるアプリケーションに向けた製品だ」と説明している。2020年11月には詳細なデータシートやサンプルを提供予定という。
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