過酷な環境下のIGBTモジュールの寿命を20年以上に:PCIM Europe digital days 2020 Infineon
Infineon Technologies(インフィニオン・テクノロジー)はオンライン開催となったパワーエレクトロニクス展示会「PCIM Europe digital days 2020」(2020年7月7〜8日、ドイツ時間)に出展。過酷な環境下での20年以上の寿命を実現するIGBTモジュール「EconoPACK+モジュール」などを紹介した。
Infineon Technologies(インフィニオン・テクノロジー)はオンライン開催となったパワーエレクトロニクス展示会「PCIM Europe digital days 2020」(2020年7月7〜8日、ドイツ時間)に出展。過酷な環境下での20年以上の寿命を実現するIGBTモジュール「EconoPACK+モジュール」などを紹介した。
EconoPACK+モジュールは、IGBTモジュールの寿命に大きな影響を及ぼす腐食性汚染物質の「硫化水素(H2S)」に対する保護技術を備えた新製品だ。IGBTモジュールは動作中に高温となるが、これは印加電圧とH2S汚染とともにパワー半導体の結晶硫化銅(Cu2S)の成長を促すことになる。結晶はセラミック基板上のDCBのトレンチで成長し、最悪の場合短絡を引き起こすなどIGBTの早期故障の原因となり、インバーターの寿命が大幅に短くなる可能性があるという。
臨界レベルのH2Sを伴う過酷な環境が発生する業界は、特に製紙、鉱業、廃水、石油化学処理、ゴム産業などが該当する。同社の説明担当者は、「高濃度のH2Sや急激な温度変動は、設置エリアの換気設備の追加や湿度制御ソリューションによって低減することもできるが、非常に高価になる可能性があり、全ての産業施設での対応は不可能だ。業界ではインバーターを保護するためのシンプルで費用対効果の高いソリューションが求められている」と説明している。
そうした中で、同社は、H2Sがモジュールの「敏感な領域」に到達する前にブロックするという独自かつ「最も効果的」な硫化水素対策を開発した。同社は、国際自動制御学会(ISA:The Instrumentation, Systems, and Automations Society)のS71.04規格に従って、一定条件下で動作するIGBTモジュールの認定のための独自試験「HV-H2Sテスト」を設計。S71.04規格では、汚染の環境条件について「軽度(G1)」「中度(G2)」「過酷(G3)」「重度(GX)」の4つの深刻度レベルを定義しているが、同社の硫化水素対策は、「G3」レベルの上限(≤2000Å/50ppb)の環境下で20年以上の寿命が保証されているという。
Infineonはこの技術を採用した新製品としてTRENCHSTOP IGBT4搭載「EconoPACK+モジュール」を紹介。耐圧1200V/300A、同450A、耐圧1700V/300A、同500Aの製品の提供を開始しているほか、EconoPIM 2、3のサンプルも利用可能としている。説明担当者は、「現在、全産業用ドライブのうち10〜15%がこの種のアプリケーションで使用されており、また、この市場は今後も拡大すると予想している。われわれは、需要の高まりに対応するために、H2S耐久性を向上させたさらなる製品を準備中だ」と述べている。
このほかバーチャルブースでは、トレンチ型SiCパワーMOSFET「CoolSiC」製品群に新たに追加した「1200V対応62mmモジュール」なども紹介。「CoolSiC」を2個使用したハーフブリッジモジュールで、IGBTを用いた従来製品では電力密度レベルの限界から適用できなかったという250kW以上の中電力用途のアプリケーションにできるとしている。既に量産中で、6mΩ/250A、3mΩ/375A、2mΩ/500Aで、それぞれ標準バージョンとTIM(Thermal Interface Material)モデルを用意している。
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