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固体から発する高次高調波光の発生機構を解明紫外にわたる波長範囲の光を観測

京都大学や東京大学らの研究グループは、ワイドギャップペロブスカイト半導体であるCH3NH3PbCl3単結晶を用いた実験で、紫外光領域にわたる高次高調波を観測し、その発生機構も解明した。

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価電子帯から伝導帯に励起されるキャリアの非線形性が重要

 京都大学や東京大学らの研究グループは2020年7月、ワイドギャップペロブスカイト半導体であるCH3NH3PbCl3単結晶を用いた実験で、紫外光領域にわたる高次高調波を観測し、その発生機構も解明したと発表した。

 今回の成果は、京都大学化学研究所の佐成晏之理学研究科博士課程学生や廣理英基准教授、金光義彦教授、東京大学大学院工学系研究科の篠原康特任助教と石川顕一教授、同大学附属物性研究所の板谷治郎准教授、量子科学技術研究開発機構の乙部智仁上席研究員および、筑波大学計算科学研究センターの佐藤駿丞助教(マックスプランク研究所客員研究員兼任)らによるものである。

 高次高調波光とは、物質にレーザーパルスを照射したとき、入射したレーザー光に比べ整数倍のエネルギーを持つ高次成分の光を発生する現象のこと。これまで、原子や分子といった気体から発する高次高調波光については研究が進み、X線光源やアト秒のレーザーパルス発生源として活用されている。最近は、固体から発する高次高調波光の観測も報告されているが、その発生機構までは解明されていなかったという。


左図が従来、右図が今回解明した高次高調波発生機構の概念図 出典:京都大学他

 研究グループは今回、低温で溶液化学的に作製することができる新しい物質のCH3NH3PbCl3を試料として用い、高次高調波発生の実験を行った。分光実験については、「Cl原子が高い電気陰性度を持ち、Pb原子の電子雲を強く引き付けることによって空間的な異方性が生じ、高次高調波の発生効率も励起光パルスの偏光角度の変化に大きく依存する」ことを想定して行った。

 試料の結晶軸に対して、入射する励起光パルスの偏光の角度を変化させたところ、結晶の対称性(4回回転対称)を反映した放射効率の変化を観測することができたという。入射光強度を強くすると、異方性は弱まる傾向が観測された。

 実験結果を理論的に説明するため、時間領域密度行列法を用いて物質内部に生じる電流の計算を行った。理論計算によって、実験結果の角度依存性と強度依存性の傾向を正確に再現した。

 実験と理論計算の比較により、高次高調波の発生機構として、これまで考えられてきた「強光電場で駆動される電子の運動」だけでなく、「価電子帯から伝導帯に励起されるキャリアの応答の非線形性が重要な役割を果たしている」ことを初めて明らかにした。

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