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新手法の酸化膜形成でSiC-MOSFETの性能が10倍に30年来の課題に光明(2/4 ページ)

SiCパワー半導体で30年来の課題となっていた欠陥の低減が、大きく前進しようとしている。京都大学と東京工業大学(東工大)は2020年8月20日、SiCパワー半導体における欠陥を従来よりも1桁低減し、約10倍の高性能化に成功したと発表した。

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「京」を使った理論計算で欠陥の正体を探る

 今回、木本氏と、東京工業大学 科学技術創成研究院 特任准教授の松下雄一郎氏、博士研究員である小林拓真氏らのグループは、この課題解決に大きな突破口を開く研究成果を発表した。

 まず取り組んだのが、欠陥の正体を明らかにすることだ。

 SiCを酸化させると最終的にはSiO2とCO2が発生するが、その途中に生成される物質がよく分かっていなかった。一体、C(炭素)はどのような形態になり、どこに行っているのか――。それを突き止めることが欠陥の解明につながると仮定し、松下氏と小林氏らは、スーパーコンピュータ「京」などを用いて第一原理計算を実施。SiC、SiO2および界面の3つの領域に存在し得る114通りのCの形態について、それらの安定性を調べた。

 その結果、「界面には、SiCの構造にはなかった、C-C結合を持つ特殊な構造の欠陥が必ず現れることが明らかになった」(松下氏)という。「SiCを酸化すると、界面には残留炭素起因の欠陥が発生する傾向にある。つまり、残留炭素を発生させない酸化膜形成法が必要ということになる」(同氏)。研究チームは、「SiCを原子レベルで酸化させなければよい」という結論にたどり着いた。


C(炭素)の行方が、欠陥の正体解明のカギを握ると仮定した 出典:京都大学/東京工業大学(クリックで拡大)

理論計算に基づき、114通りのCの形態の安定性を調べた結果、界面には、残留炭素に起因する欠陥が生成されることが分かった 出典:京都大学/東京工業大学(クリックで拡大)

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